わたしは何があっても泣けない身体らしい。親が死んだって友達に裏切られたって失恋したって、どんなに悲しくても涙なんか出ない。特に感情が乏しい訳ではなく悲しい気持ちと反して涙は流れてくれないのだ。別にそれはそれで良かった。泣くのは面倒だと思っていたし、すぐに泣く人は好きになれなかったから。 「涙っつーのは自然に出てくるもんだ!」 『だから自然と出てこないんだってば』 「はあ?言ってる意味が分かんねーってば」 『ナルト馬鹿だもんね』 「馬…っ?!」 泣くってどういうことだろう。目から水が流れるなんて痛くないの?人間はどうして泣くの?何でわたしだけが泣けないの?自分が経験してないことは考えたところで分かりはしない。 「いつか名前にも泣ける日が来ればいーな!」 わたしもそう思った、のに、 『ナルトっ、聞こえる?!ナルト!!』 わたしを庇ってナルトが大怪我を負った。すぐに病院に運ばれて命に別状は無かったが回復までに時間がかかる酷いものだった。病室に訪れたわたしを責めるでも気を遣って慰めるでもなく笑顔で迎えてくれた彼に、目頭が熱くなる。ずっとずっと、知らない内に塞き止めていたダムから大量の水が流れ出す。何であんなことしたのよとか、余計なお世話よとか、無事で良かった、とか。言葉は全て呑み込まれていった。 「なんだ、泣けるじゃん」 『…うるさい。馬鹿』 泣いてるわたし、面倒臭い。でも心が軽くなったのは多分気のせいなんかじゃない。 なみだ 12'0119 |