少女漫画とか恋愛ドラマでありがちなパターンのひとつに、女主人公が幼馴染みと恋に堕ちて恋人同士になったりする設定があるが、現実はそんな簡単に物事は進まない。

男の幼馴染みがいて羨ましいとしょっちゅう言われるけど、私は、彼が居てくれて嬉しい。など思ったことは一度も無かった。むしろ、何故。よりによって私の幼馴染みとして育ってしまったのか。そう思えて仕方がない。

幼馴染みでなければ何かが違ったかもしれないのに。友達として出会っていたなら、もっと違う未来が見れたのに。


それも全て、イタチに恋をしなければ考えずに済んだ事。


「元気だったか」
「うん」
「しばらく見ない内に随分と大人びたようだが」
「私もう22だよ?」
「そうだったな」


数年振りにたまたま道で会ったイタチは昔の面影はあまり無くなっていたものの、優しい笑顔や性格は全然変わっていなかった。


「イタチも元気そうで良かったよ」
「ああ。…こうして一緒に歩くのは久しぶりだな」
「…そうだね」


私がイタチに対する恋心に気付いてからは、彼を自然と避ける生活を送るようになった。叶わないと分かってるからこそこれ以上気持ちが大きくならないようにするのだけで精一杯で。


イタチは何でも出来る人で、優しくて強くて、顔もカッコ良くて、当たり前に好きになった。まるで、生きる為に摂る食事のように。
どの女の子たちよりも近くにいれた。どんな時でもすぐに構ってくれた。とても嬉しかったし、このポジションも悪くはないってずっと思ってた。

でもイタチは私を妹としてしか見ていないと知った時は、幼馴染みという関係と立場を酷く憎んだ。他の誰よりも近くにいるのに誰よりも越えられない見えない壁が私たちの間に立っていたから。


「小さい頃はお前は泣き虫だったな」
「…昔の話よ」
「時が経つのは早い」
「オヤジみたいな発言止めてよね」
「本当のことだろう」


出来れば何も知らないまま、恋に気付かないまま大人になりたかった。報われないと知っていながら、それでも好きだった。大人になったってあなたにとっては変わらない妹的存在。気持ちを伝える勇気がない私は、せめてこの関係が崩れないよう守り続けるのに必死で。


妹じゃなくてあなたの恋人になりたかったよ。


イタチはすぐ隣にいるのに。どうして?

どうして、あなたをこんなにも遠く感じるの?


こんなに
傍にいるのに


∴Love!様企画提出物
(110920)
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