今まで数え切れないくらい喧嘩して、その度に傷付けていっぱい泣かせたね。これからは泣き顔じゃなくてたくさん笑顔にさせるよ。 だから、俺と。 * コピー忍者はたけカカシ。今世紀最大の緊張。任務が休みの今日は彼女と過ごす大切な一日。そしてこの日は、俺にとって大事な一日になるだろう。 「……」 夕食を終えて食器を洗う名前の背中を、ソファーに座り眺める俺。いつもと同じはずなのに、いつもと違って見えるのは、俺の心の問題なんだけど。 名前と付き合ってもう三年が経つ。一般人の彼女には毎日心配させてしまっているけれど、忍という仕事をよく理解してくれている。淋しいのに文句一つ言わないで帰りを待っていてくれる名前の為に、俺も生きて早く帰ろうって思えるんだ。 右手でポケットの中の物に触れた。昨日紅に協力してもらって買いに行った四角い小さな箱。中には彼女の薬指と同じサイズの指輪が入ってる。これを、出来れば今日、彼女に渡したい。 「どうしたの?疲れた?」 「!、…あ、いや」 「?」 「ハハハ…!疲れてなんてないよ。大丈夫…」 いつの間にか後片付けを終えた名前が隣に座っていた。明らかに動揺する俺を怪しげに覗き込む。変に勘の鋭い彼女に隠し事が出来たことなんてなかった。 「カカシ。何か私に隠してることあるんでしょう?」 「なんで?」 「なんとなく」 「何も隠してないよ」 「うそ」 「…」 「何年一緒にいると思ってるの?バレバレよ」 こうなってはこれ以上隠すのは無理だ。もう観念して渡すしかない。そう思ってポケットに潜む箱を名前の前に差し出した。 「何?これ」 「開けて」 箱を開けた名前は中に入っている指輪を見て目を丸くした。 「カカシ、これ…」 「別に隠してた訳じゃないんだ。ただ、タイミングが分からなかった」 生まれて初めてすることだから、照れ臭かった。こんなことをする相手がこんなにも早く現れるだなんて、思ってもみなかったから。 「渡す勇気もなかった」 断られるんじゃないかって不安だった。この仕事を理解をしてくれていても、やっぱりお前にはいつも側にいてやれる人がいいんじゃないかって。 「正直これをお前に渡すべきなのかも分からなかった」 指輪で名前を縛り付けておいて、一生一緒にいてやれる約束は俺には出来ない。 なんて、我が侭。 「…情けないよな」 知らずに作っていた拳に名前の手が添えられた。 「私はね、カカシ。全てを覚悟した上で今こうしてあなたの隣にいるの」 名前の穏やかな声。まるで小さい子に言って聞かせるようなものだった。 「カカシの素直な気持ちを私に聞かせて」 「俺は…」 「うん」 「名前と、結婚、したい」 声が震えた。やっと顔を上げることが出来て名前と目が合った。俺の大好きな笑顔を浮かべていて。 「カカシがこんなにしおらしくなるなんて」 「…緊張してんのよ」 「ふふ、そうよね」 「でさ、名前ちゃん?返事なんだけど…」 「あら?私はまだちゃんとプロポーズされてないわ」 ふわふわな笑みから悪戯な笑みに変わり、指輪の入った箱を渡された。 「一生かけて幸せにします。俺と結婚してください」 「はい、喜んで」 これからは君の幸せと笑顔の為だけ生きていけたらいい。そう心に決めて薬指に指輪をはめた。 嬉しそうな君の目から一筋涙が零れた。その笑顔をいつまでも守っていけますように。 薬指の誓約 はたけカカシBD記念 おめでとうカカシ先生^^ 結婚夢でした。 110915 |