九尾の捕獲命令を下されたイタチ・鬼鮫組がアジトに帰ってきたのはついさっきのこと。帰ってくるなりすぐ自室に籠ったイタチに首を傾げた。そんな私を見ていた鬼鮫が、今日の任務のことを話してくれた。のはいいんだけど……


「鬼鮫に聞いたよ。月読と天照、使ったんだってね」

「………」

「…ばか」

「使わなければ俺たちは殺られていた」


部屋の扉をノックして返事を待たずにノブを回せば、薄暗い部屋の隅に置かれたベッドに横たわるイタチがいて。私はその傍らに膝を着く。そしてさっきの言葉を投げ掛ければ、のそのそとイタチは起き上がった。


「カカシさんや他の上忍もいた。月読はまだしも、天照まで使わされるとは俺も思わなかった」

「珍しいわね、イタチが手こずるなんて」

「それにナルトにはあの自来也様がついていた」

「あとはサスケ、でしょ」

「……ああ」


イタチは弟が絡むといつも何とも言えないような顔をしてるからすぐに分かる。自分で気付いてないんでしょう?どんな顔をしてるかなんて。


「私は正直国も人柱力も暁も平和もどうでもいいの。それでも私がイタチに着いて来たのは、」

「……」

「弟のために全てを捨てたあなたをひとりにしたくはなかったから」

「……」

「イタチのことが大事だから、だよ」

「名前…」

「ねぇイタチ。もっと自分を大切にしてよ。自分は死んでもいいだなんて思ったりしないで」


そう言えば酷く悲しそうに顔を歪ませたイタチに何だか泣きそうになって、顔を隠すようにイタチの首に腕を回せば優しく背中をさすってくれる。わたし、しってるよ。その眼はもうあまり見えていないことを。私はあなたの眼にはどう頑張ってもなれないけれど、あなたの側にいてあなたと生きることは出来るの。


「イタチ。イタチが死んで、悲しむ人がひとりでもいるってことを、お願いだから忘れないで」

「…すまない、名前。ありがとう」

「…うん」


こんなにも悲しいのに涙は出てはくれなかった。





あなたが決して泣かないからだよ。


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