「…ん、もっかい」
「ほんと名前ってば好きだよな、キス」
「ナルトは嫌い?」
「んなの好きに決まってるってばよ」


そう言って触れるだけのキスをナルトはくれる。さっきからそれを何回も繰り返す。大人なちゅーも好きだけど、今みたいなのも私は大好き。ナルトによくキス魔って言われるけど、もちろんナルト限定の話。別にナルトが初めての彼氏ってわけじゃないけど、こんなに人を好きになったのは彼が初めて。


「昔サスケとしたこともあったよね」
「覚えてたのかよ!」
「もちろん。あれは凄く面白かった」
「忘れてくれ…」


くすくすと笑えば拗ねたように抱きついてくるナルト。それがなんだか可愛くて頭を撫でる。大きい子供みたい。私の肩に顎を乗せて、子供扱いするなってばよ、って。あれ、バレてた。だって可愛いんだもん。こんなナルトが見れるのは私だけの特権。知ってるのも私だけ。あまりにも可愛いからついイタズラ心が芽生えて。


「そういえば、ナルトはサクラが好きだったよね」
「う、」
「二股とかしてない?」
「し、してないってばよそんなこと!」
「焦っちゃって怪しい…」
「んなっ!」
「急に私を好きだなんて有り得ないもんね」
「ちょ、」
「私はナルトがこんなにも好きなのに…」
「え、」
「放して」
「え?!」


ナルトの胸を押して背を向け怒ったフリ。急な態度の変化について来れてないのと、私が怒っているんじゃないかという焦りから戸惑うナルト。と、笑いを堪えるのに必死な私。


「……」
「名前〜!」
「ぷっ!あはははは!嘘、嘘だよナルト!」
「なにー!!」
「面白くて、ふふっ、止まらなかった。ごめんね、冗談だよ」


でも笑いは止まらない。ナルトのあんな顔見たことなかったから、逆にビックリさせられた感もあったけど、あー楽しかった。目尻に溜まった涙を指で拭っていると、また私に抱きつくナルト。


「ほんとにビックリしたってばよー…」
「ごめんごめん」
「ずっと気にしてたのか」
「え?」
「その…俺がサクラちゃんを好きだったって」


もしかして悪いことしちゃったのかな?心なしか震えているような気がする。首に顔を埋めるナルトの髪がくすぐったい。


「ううん、気にしてないよ」


気にしてたのは最初だけ。でも今は全然気にしてない。だってナルトから好きがいっぱい伝わってくるもの。ぎゅって力が込められて、何だか申し訳なくなってしまった。


「ごめんね、ほんの冗談のつもりだったのに」
「…許さねー」
「ナルト?」
「許さないってばよ」


いつもより低い声色に怒らせてしまったんだと気付く。


「、どうしたら許してくれる?私、何でもするから、怒らないでっ」


自分が蒔いた種なのに、凄く泣きそうな私がいて、どうしようもないバカだと思う。


「じゃあ」
「うん」
「名前からキスして」
「うん。………は?」
「何でもやるんだろ?だから名前からキスしろよ。それに今うんっつったろ」


にやり、してやったりな笑み。は、はめられた…!腕から逃れようともがいてもガッチリ掴まれて身動きすらとれない。わたしのバカ!!


「あ、の、」
「早く」
「ナル、」
「名前」
「まって、」
「ほら」


目を閉じてキスを待つナルト。私からしたことなんて無いから無理!でも何でもするって言ったからにはしないと、でも心の準備が、だけどやらないとまた怒るかも、だから早く、キス、


「…何で頬」
「……」
「…顔が真っ赤だってば」
「く、くちには…むり、でした」
「…おまえ、マジ可愛い」
「ナル、っん、」


結局ナルトがキスをくれて、しかも深いキス。

私はそれだけであなたに酔っちゃうの!だいすきよ、ナルト!



キスの魔法で虜にして

(おまえの泣きそうな顔が可愛かったから意地悪したくなったんだってばよ!)

110825
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