私には里を抜けた親友がいる。なんでも一族を皆殺しにしたとかなんとかで抜けたと聞く。そんな奴が何で私の親友なのかは私自身が一番問いたい。そしてどうしてそんな誇れもしない親友に恋をしてしまっているかを。


親友は何でも出来る奴だった。だった、といった表現は可笑しいのかもしれないけど、今はどうしているのか分からないからよしとする。今思えば一族の血継限界のシャリンガンを持っていなくてもアイツは、忍としての才が溢れ出ているような男だったような気もする。最後に会ったのは10年以上も前の話だ。アイツは私の中ではもう曖昧な記憶となっていた。だけどどうしてかこの気持ちだけは消えてはくれない。

でも苦しくはない。いつか私から会いに行けばいい話だ。アイツのように強くなって、一発ぶん殴ってやるんだ。それくらいしたってアイツは、イタチは、私に何かを言える立場じゃない。理由が何にしろ女を泣かせる男は最低だ。


ようやく準備は整った。木の葉はいつまでも大好きな里だ。何の未練もないと言ってしまえば嘘になるけど、私には追いかけたい人がいるから。もうここを出てしまえば後戻りは出来ない。額当てのマークに横一文字に傷を付ける。さよなら、木の葉のみんな。


会いたい人がいるんです。


「今から行くから、覚悟しなさいよ、イタチ」


―――

頬を赤く腫らしたイタチを前に呼吸を荒くする私は涙目でコイツを睨み付ける。10年ぶりのイタチは交わすのが容易いはずの私の拳をいとも簡単に受け入れた。


「今のは私に黙って里を抜けた罰よ」


なんて格好付けても意味がないのに。追いついたと過信した自分の力は再び遥かに差が開いていた。今のイタチは私を簡単に殺す力がある。でもそれをしないのは私が彼の 親友 だから。


「里を抜けたか」

「ええ。バカな親友に追いつくために修行してここまで力を身に付けたのよ」

「バカだな、名前」

「ほんと。バカばっか。アンタも、私も」


笑みが零れる。ああ、この感じ、とても懐かしい。何だか昔に戻ったみたいな、そんな気持ちになる。イタチも笑ってる。その顔は変わらないなぁ…。そもそも元から私たちの間に変化なんて無いのかもしれない。


「私はイタチに会いに来たんだよ」

「そうか」

「ずっと会いたかったから、隣に並んでも恥ずかしくないくらいこうして強くなった」

「…名前は昔から変わらないな」

「イタチも何一つ変わってないね。安心した」


こんな間近でシャリンガンを見たことなんて一度もないんじゃないかってくらい私たちの距離は近かった。記憶に残るイタチは同じくらいの背だったのに、新しく記憶に刻まれたイタチは私より高くて見上げる形になっていた。私の知らないイタチをもっと知りたくなった。


「帰れって言っても訊かないんだろう」

「当たり前。だって私はイタチの横でだけ私らしくいられるもの」

「ふっ。どうやら少し見ぬ内に強気に育ったようだな、名前は」

「…もう。せっかく会いに来たんだから少しは喜んでよ?」

「ああ、そうだな」


踵を返す彼の横に並ぶ私。10年という月日を埋めるように、これからはアナタの側で、ずっと……



会いに行ってもいいですか?

やっと会えた
私の 愛しい人


(110819)
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