里を抜けたサスケに抹殺要請の許可が下ったのはつい先日のこと。五代目が昏睡状態であるために六代目火影としてダンゾウが就任したというではないか。ダンゾウとは暗部の根の担当らしく謎に包まれた存在だ。サイに聞いても教えることは出来ないと断られた。そのダンゾウがサスケの殺処分に許可を出したとかなんとかで、同期たちは憤る者もいれば涙する者もいた。逆にそこまでの問題にまでなってしまったサスケの里抜け及び暁まで成り下がったという噂は、もうどうしようも出来ない領域に入ってしまったことを示していた。


耳に入ってきたイタチ死亡の報せは、サスケの復讐を終えたことを喜ぶべきことのはずだったのに、事態は更に悪化。サスケは全ての火種である木の葉上層部の人間を殺したあとに木の葉を潰すと決めたらしい。何が彼をそこまで変えてしまったのか。イタチの死が関係しているのか、それは分からないけれど、もう私の知っているサスケはいないことだけは分かった。

サスケは大切な仲間だ。たとえサスケが私たちをそう思っていなくても。…決して木の葉の里は潰させたりなんてしない。サスケを殺してでも、彼を止める。


一人で行動に出てサスケの匂いを探ると、すぐにサスケは見つかった。知らない仲間を連れていた。久しぶりに会ったサスケは昔より大人びていて、だけどそこに昔の雰囲気はない。

私は彼が一瞬だけ目を見開いたのを見逃さなかった。



「名前か」

「久しぶり、サスケ」

「オイ誰だテメェ!」

「香燐、やめろ。お前らは先に行け」

「なッ…」

「行け」

「行くぞ香燐」

「…分かったよ!」



他の三人が姿を消した。サスケからの殺意は感じられないので私も警戒を解く。



「サスケ。五大国にサスケの抹殺の命令が下ったの。今ならまだ間に合う。お願い、戻ってきてサスケ。私はサスケを殺したくなんてないよ!」

「…俺の答えは変わらない」

「どうしても、木の葉には帰ってきてはくれないの?」

「………ああ」



表情は変わらない。きっと、本気だ。サスケの意志は強い。私はサスケを助けたいだけなのにどうしてこうもすれ違ってばかりなの?またみんなと笑い合いたいだけなのに、なんで…。



「私はサスケのことが好きだよ。好きだからずっと側にいて欲しいって思ってる。毎日会いたいし、好きだってこと伝えたいし、こんなにも、」



触れたいのに。

そう言えば、サスケは瞳を伏せたまま何も答えなかった。どんなに想いを伝えても彼の中の強い何かには勝てないから、ただ私の想いを伝えただけ。私がどう感じているのか知っていてくれればそれだけで嬉しかったから。



「この先いつかは名前のことを殺す日が来るかもしれない」

「……」

「それは里を抜けた時点で考えて覚悟を決めたつもりだ。けどな、俺はお前を忘れたことなんて一度もなかった」

「サス、ケ…、」

「出来ればお前を殺したくはない。俺だってお前に触れたい」

「じゃあ触れてよ!その手を伸ばして私を掴まえてよ!」



サスケは首を振った。悲しそうな目だった。そんな目を見てしまったから、もう何も言えなくて、ただ俯いた。



「俺はけじめをつけたい」

「けじめ…?」

「ああ」

「けじめって、なんの」

「感情を捨てる」



俺は復讐者だ。木の葉を潰すことはもう変えるつもりはない。木の葉の忍とも馴れ合うつもりもない。だからお前とこうして会うのもこれが最後にしたい。だから最後に、



「お前に、名前に触れたい」



そう言って両手を広げたサスケ。その腕の中に飛び込めば、私もその“けじめ”をつけなければならないって分かってるのに、足は勝手に彼の下へ向かう。これで最後だなんて、認めたくないのに。


久しぶりのサスケの匂いと体温に包まれる。キツく抱きしめてくるその身体に私も腕を回して同じくらいに抱きついた。私の耳元でサスケが呟く。



「もし全てが終わって互いに生きていられたら、必ず名前に会いに行く」



そしたらずっと一緒にいよう。

頷いた私の目から一筋の涙が零れ彼の服に染みを作った。










世界にふたりぼっちだったらいいねなんてそんな甘ったるいかなしみ

title by hmr
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