放課後・体育館裏。 これはまたベタな場所に呼び出したもんだと思いつつ足を運ぶと見たことない男子生徒がいた。私に気付くと頬をほんのりピンクに染めて、あの、その、と吃りながら後頭部をかいた。 これが何を示すのか分からないほど子供じゃない。 「入学してからずっと名字さんのことが好きでした!付き合って下さい!」 「ご、ごめんなさい…」 やっぱり。とキッパリ断る。男子生徒は落ち込んだ様子で「そっか…。わざわざ来てくれてありがとう。それじゃあ」と残し私の横を通りすぎて帰っていった。 今のはちょっと可愛げなかったかもしれない。それに即答しすぎたかもな…。そう思っても時すでに遅し、だ。 「ありがとうぐらい言えばよかったかな…」 「名前ちん」 …………………? 「むっくん!今の、見てた?」 「見てた。だって俺ずっとここいたし」 「ですよね」 むっくんこと紫原敦。 スナック片手にちょこんと座って手を振っている。というか図体デカイくせに"ちょこん"が似合うってどういうことだ。 「お恥ずかしいところを」 「即答だったね」 「…何て言えば良かったのかな」 「んー?」 「いやだから、さっきの」 むっくんの隣に腰かける。 よくこんなに菓子食えるな。体がデカイと燃費もよろしくないのかな。 「さあ〜。分かんない」 「あ、そうだよね。むっくんに聞いた私がバカでした」 「………」 「ごめん怒らないで私が悪かった」 「……」 「私、告白されるのとか初めてだったから、どうしていいか分からなくて」 あの人初めて見る人で名前も知らなかったけど、もうちょっと違う言い方出来たんじゃないかなって思って。…酷いことしちゃったなあ…。私は好きじゃない人と付き合うとかそんなこと出来ないけど、友達にぐらいなれたのかなぁとか思うとなんだかさ。 「後悔するならもっと考えて返事しろって感じだよね…」 「………」 「………」 「……サクサクッ」 「なんか言ってよむっくん」 「いる?」 「…いる」 「大丈夫だよ名前ちん」 「……………うん」 サクッと音が鳴ってまいう棒の味が広がって、ちょっぴり悲しい気持ちが軽くなった。ような気がした。 「美味しいよぐすん」 「よしよし」 「むっくんもうひとつ頂戴」 「ヤだ」 「え」 なんでかな。無性に、涼太に会いたい。 「りょーた」 「ん?どうしたの?」 「わかんない。ぎゅってしたくなったの」 (きゅんっ) 12'0923 |