03

結局私は涼太の反対を半ば無理矢理押しきって、さつきと一緒にバスケ部のマネージャーをすることに決めた。
帝光中バスケ部はかなりの強豪校らしく、部員の数は100を越える。そんなバスケ部のマネージャーになって早1ヶ月。仕事も覚え三軍マネジから二軍マネジへと異動した私だったが、忙しさは三軍とさほど変わりなく相変わらず体育館や倉庫などを行ったり来たりしていた。


「名前、いま私手が放せないから代わりに洗濯干してもらってもいい?」
「おっけー!」


さつきの代わりに洗濯物を干しに外に向かう。二軍にもなると人数はかなり増えるので洗濯物の量は半端なくこれだけでも相当疲れてしまう。
皺にならないよう一つ一つ丁寧に干していく。これが終わったらドリンク作りがあるからのんびりしてらんない。


「これ落ちてましたよ」
「?あ、黒子くん、わざわざありがとう!」
「いえ」


振り返ると三軍の一年生黒子テツヤくんが立っていた。彼は影が薄すぎて人に気付いてもらえないことが多く、私も三軍マネジの時はよく驚かされていた。(今ではもう馴れた)


「休憩中?」
「はい。体育館の中は蒸すので涼みに来ました」
「そうなんだ。お疲れ様」
「名字さんもお疲れ様です。どうですか、二軍マネジ」
「三軍とあんまり変わらないよ。人手不足はどこも一緒みたい」


手は止めずに黒子くんと会話を続ける。彼はいつも無表情で感情表現こそ分かりづらいこともあるが、基本的に優しい人だと私は認知している。
そして、バスケが大好きであるということも。


「みんながバスケしてるの見るとさ、何かに夢中になるのってやっぱいいなーって思うんだよね」
「名字さんは夢中になれることは無いんですか?」
「私じゃないんだけど、幼馴染みがねぇ」
「確か、黄瀬くん…でしたか」


まさか黒子くんの口から涼太の名前が出てくるとは思わなかったが、間違ってはいないので頷く。


「やろうとすると何でも出来ちゃうからやらないんだって。ナメてるよね」
「羨ましいです」
「そう?私はスポーツは努力してこその勝利だと思ってるからアイツのその考えは嫌いだよ」
「それも一つの才能ですよ」


黒子くんは持っているボールをくるくると指先で器用に回す。


「私ね、一軍マネジになりたいの。だから私は努力するよ!才能になんて負けない!」
「マネージャーに才能も何もないと思いますけど」
「そうでもないよ。さつきなんて情報収集すごいし!あれは才能だよ」
「そうですね。言われてみれば、そうかもしれないです」
「私も頑張るからさ、だから黒子くんも一軍目指してバスケ頑張ってね!また黒子くんのマネジしたいし」


ちょっとだけ目を見開かせた黒子くん。そんな彼に笑顔を向けるとかすかに口許が弧を描いた気がした。
黒子くんはボールを脇に抱えて立ち上がった。私も洗濯物も干し終えたのでかごを持ち上げる。


「休憩も終わるので僕はそろそろ行きます。仕事頑張って下さい」
「ありがとう。私ももう戻るね。黒子くんも頑張って」
「はい」


体育館に向かうその姿を見届けて、ドリンクを作るために持ち場へと戻った。



「涼太、アンタ努力って言葉覚えなさいよ」
「何スかいきなり?!」


12'0914
黒子と絡ませたかった故のお話。
キセキとも絡ませたい
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