02

昼休み。弁当を持った涼太が5組に来た。それだけで上がる女子の歓声に、すでに有名になってるんだなぁと思った。





「はぁ?!モデル??!」
「声でかいっス!」
「ご、ごめん。スカウトされたの?」


そうなんスよ〜って嬉しそうに笑う涼太。開いた口が塞がらない。
イケメンだとは思っていたけどまさかスカウトまでされるとは。そしてやけにやる気満々なのは気のせいだろうか。


「やるの?モデル」
「もちろん!部活もやらないつもりでいたし面白そうだから」
「ふーん…」


事務所の資料を一つ手に取る。
ってここ結構有名なモデルが所属してる事務所じゃん…。そんな所からのスカウトだなんて。
元の位置に資料を戻して玉子焼きを一口かじった。


「名前は何か部活入るんスか」
「ちょっと。さりげなくおかず取らないで下さい」
「おばさんの玉子焼き超好きなんだよね俺」
「知ってるけどさ……んぐっ」
「拗ねないでよ。代わりに俺のあげるから」
「……もぐもぐ(急に口に突っ込まなくても…)」


ざわざわ、ざわざわ。
クラスの女の子たちが何やら騒いでいるのを横目に涼太の食べかけのサンドイッチを一口もらう。

突き刺さる視線に居心地の悪さを感じながらも、私は続けた。


「マネージャーでもやろっかなぁって」
「ダメ、ダメっス!マネージャーなんて絶対反対!」
「えーいいじゃん」
「野郎共の中にこんな可愛い子放り投げるなんて俺には無理っス!!」


立ち上がって私の肩をこれでもかというくらい揺する涼太はまるで父のようだ。
しかも放り投げるって自分から行くのに何を言ってるんだろうかこの人は。


「じゃあ涼太もモデルやらないで」
「う…そ、それは」
「はい決まり。モデル頑張ってね、りょーちゃん?」
「名前〜…」
「玉子焼きあげるから機嫌直してよ」


分かってるよ、心配してくれてることぐらい。でもおあいこだよ。私だって本当は涼太にモデルなんてやってほしくないんだから。


「どこにするか決めたんスか?」
「友達がバスケ部のマネージャーやるらしいから一緒にやろうかなって」
「………」
(何かすごい言いたげだなぁ…)


それでも私はいつも涼太を一番に応援してるからね。


12'0914
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