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涼太がバスケを始めると知った時。嬉しさと同時に言い様のない不安が芽生えた。

小さい頃から何をやっても簡単にこなしてしまう涼太は、本人も気付かないうちにやる気や努力というものを自分から遠ざける生活を送るようになっていた。頑張らなくても出来てしまうから頑張る必要はないと、悪く言ってしまえば大した取り柄など何一つないままだった。
私は涼太のそんなところが嫌い。やらなくても出来ちゃうからやらない、なんて、努力をしてる人に失礼だ。私はマネージャーとして努力する部員の姿を間近で見てきたから分かる。頑張りもしないで何かを得ようなど甘ったれた考えだけで変わるわけないのに。悔しいけど涼太には才能がある。だから、いつか誰の手も届かないとこまで行って、ようやく手に入れたものを簡単に捨てるのではないか、不安で仕方ない。
それでも誰よりも近くで見てきて、たまに見せる悲しそうな表情や心の奥底で燻っていた私にも言えない想いがあることを知っていたからこそバスケに出会うことで変わってほしかった。


「やっぱスタメン入りは難しいっスね」
「当たり前でしょ」
「でも黒子っちでさえレギュラーなのにおかしくないスか?」
「おかしくない。あれは彼の努力の賜物なの。私は黒子くんが三軍の頃から頑張ってたの、知ってるし」
「く…っ、いつの間にか名前と黒子っちが仲良くなってる…!」


朝、学校までの道中。アンタが入部する前から仲良しだったけど、とは言わず、短い溜め息を一つだけ吐いた。
涼太は入部してすぐ一軍に昇格したが興味を失うどころか青峰に強い憧れを抱きどんどんバスケに夢中になっていった。私が抱いていた不安など杞憂でしかなく心配する必要なんてどこにもなかった。
バスケをしてる涼太はどんな時よりもきらきらして見える。それは涼太自身が何よりもバスケを楽しんでいるからだろう。プレーを通してひしひしと伝わってくる。ああ、頑張ってるんだなって感じた。


「ま、すぐスタメンになるっスけど!」
「涼太でも無理なんじゃない〜?」
「ヒドッ!そこは応援するとこでしょ?!」


本当は応援してるよ。調子に乗るから言ってやんないけど。レギュラー入りしても、バスケ辞めないって信じてるから。

下駄箱を開けると一枚の紙が宙を舞った。涼太が頑張ってるんだ。私も頑張らないと。


「名前〜行くっスよ〜」
「うん」


紙を握り締めて涼太の後を追った。


《昼休み屋上に来い》


大丈夫、私は負けない。


12'1006
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