《昼休み屋上に来い》 言われた通り屋上に足を運ぶと私を待ち構えていたのは何度か見掛けたことのある数人の女の子。重い扉を開けてやって来た私を目にした途端鋭くなる目付き。フェンスにもたれ掛かる彼女たちの前に立つと、一歩前に出たリーダーらしき子に胸ぐらを掴まれた。苦しくてう、って息を詰まらせてしまったが今はそれどころじゃない。物凄い剣幕で睨み付ける彼女はいつだったか涼太と廊下を歩いているのを見たことがあった。その後ろにいるのは一年の時に食堂で私に話し掛けてきた女の子。まだ諦めてなかったんだ。 「あのさ」 胸ぐらを掴む女の子、宮村さん(上履きに書いてあった)の声ではっとする。宮村さんは不機嫌なオーラを隠しもせずに敵意剥き出しで私の体を突き飛ばした。突然の衝撃に地面に倒れこむ私。咄嗟に付いたてのひらが擦りむけたみいでひりひりした。 「お前一年の時から調子乗りすぎ。幼馴染みだかなんだか知らないけどあんま調子乗ってると痛い目見るよ」 「今さら、何を」 「今さら?今まで大目に見てやってたんだっつーの。ウチらにとってアンタを痛め付けるのなんて簡単なんだ、よ!」 どん、と鈍い音と共にお腹に激痛が走る。お腹を蹴られたんだとすぐ分かった。うまく呼吸が出来なくなって胃の中身が出そうになるのを口に手を宛てることでなんとか抑えた。体勢を保つのも一苦労でその場に蹲る。彼女たちの笑い声なんてもらや耳に入ってこない。痛い、苦しい。声にならない悲鳴を上げて痛みに耐えていると前髪を掴まれて無理矢理顔を上げさせられた。 「あはは、いい気味」 「はっ…、ぐ、」 「これで分かったでしょ?もう痛い思いしたくなかったら涼太には近付かないで」 痛みで意識が朦朧とする。目の前には可愛らしい顔には似合わない歪んだ笑みを浮かべる宮村さんがいて、頷くことしか許されないぐらいの威圧感がそこにはあった。声を出すのもツラかったので首を横に振ると彼女の顔から笑みが消えた。無表情に少し恐怖を感じた瞬間にはまた痛みが身体を駆け巡った。どうやら別の子に鳩尾を蹴られたようだ。げほげほと咳き込む。もう自分で立ち上がることも出来ない。徐々に霞んでいく意識。 「ま、いいけど。私は優しいから特別に顔と見える位置に傷は付けないであげる」 「じゃあ君には俺が傷を付けてあげようか。もちろん、見えない所に、ね」 意識が途切れる直前聞こえたのは聞きなれた幼馴染みのものではない、けれど私のよく知る人の声だった。 どうして、ここに、あなたがいるの? 12'1009 |