「た…ただいま…」

「おかえり。今日は随分疲れてるね」

「今日は何か忙しかったから…あ〜疲れた〜」

「お疲れ様」

「ん」


スーパーの袋を総司に渡してソファにダイブ。もう動く気にならない。ほんと疲れた。水曜日は比較的に忙しくはないのだけれど今日は違った。先方に渡す書類に不備があったとか会議に必要な資料を紛失したとかミスが重なり全員が慌ただしく、私は課長と共に契約会社に足を運び謝罪と不備のあった書類の訂正及び修正に奔走していたのだ。そんで会社に戻ればコピー機の故障。みんな疲れた表情を隠しもしていなかった。


「着替えて来なよ」

「う、ん」

「今日は僕がご飯作るからそれまで名前はゆっくりしててよ」

「それは助かる。総司ありがとう」

「どういたしまして」


スーパーの袋を漁り出した総司を残して部屋に行って部屋着に着替える。スーツを脱いだ時の開放感は堪らない。読みかけの小説を手に取り再びリビングに戻った。ソファに寝転がって続きを読む。最近マイブームのホラー小説。あまり読まないけど、恋愛小説や推理小説に飽きるとこういった類いも読んだりする。でも嫌いではない。むしろ好きな方だ。しばらく振りに読む本の内容を思い出す。確か、主人公は霊感の全くない青年で、大学のサークル仲間で心霊スポット…病院だったかな?に面白がって侵入するけど病院から出れなくなって、それで…、それで……


「名前、名前」


一人ずつ姿が消えて、


「名前?おーい?」


えーと…


「名前!」

「!!」

「やっと起きた」


気付くと目の前に総司の顔。ビックリして固まる私を見て笑う総司。さっきまで手の中にあった小説は彼の手に握られている。あれ?確か私は前読んだ所まで確認してて、それから、……あれ?
体を起こす。テーブルに並べられた食事。咄嗟に時計を見ると帰ってきてから40分以上が経っているようだった。知らない内に寝ていたらしくご飯が出来たから総司が起こしてくれたんだ。どうやら自分が思ってるより身体は疲れているみたい。今日は早く寝ようと思った。


「私寝ちゃってたんだね」

「小説落としても気付かないくらいだから相当深かったんじゃないかな」

「気付かなかった」

「ご飯食べるよね?」

「うん」


いただきます。箸を持って魚を食べる。向かいに座った総司も食事に手をつけ始めた。


「…味噌汁うす…」

「本当だね」

「いや、本当だねって総司が作ったんだよ」

「うん」

「いやだからうんじゃなくてですね」


総司は薄味のが好みだったっけか?まあいっか。作ってくれただけで凄く有難いことだし美味しくない訳じゃないし。私は次にやたらと色の濃い肉じゃがを口に運んだ。瞬間に広がるしょっぱい味。


「ん?!!そ、総司!」

「どうしたの」

「肉じゃがしょっぱいよ…!」


総司も一口。すぐ眉をしかめてやっぱり多かったか、と言った。何がと問うと、醤油、と一言。本人曰く目分量で入れたそうだ。なんというか、とても総司らしい。思わず声を出して笑ってしまった。そしたら、総司も、笑った。



私が笑って貴方も笑う

(こんな毎日がずっと続けばいいのに。そう思ってしまう私は、なんて欲張りなんだろう)


110403
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