最近の名前は著しく体調が悪い。会話をするのも辛そうだから傍らに静かに座る。苦しそうな浅い呼吸が続く。痛みを和らげる薬の効き目は低かった。


「……わたし、思ったの」
「…何だ?」
「一は、どんな人に恋、をして…どんな、恋愛をする…のかな、て」
「何をバカな事を言っている。俺には名前がいれば良い」
「はは…、馬鹿、だなぁ…一は」
「馬鹿なのはアンタだ。これ以上ふざけた事を言えばいくら名前でも許さん」


目を見て言えば、困ったように笑った。名前はバカだ。笑えないとこで笑うなど、バカだ。


「怒らないで、よ。…冗談…だから」


そこで派手に咳き込んだ名前の口からは大量の赤が吐き出された。いつか眺めた花より、欲しいと言って買ってきたチューリップよりも、真っ赤なそれに時間が止まったようだった。



もう、すぐそこだね

待ってくれ。まだ、逝かないでくれ。


110911
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