日曜日の午後、快晴。曇りのち雨という天気予報が外れてくれたおかげで、前々から予定していたお墓参りに来ることが出来た。最寄り駅から電車で一時間、バスで15分の場所にあるこの墓地の一角には、私の大好きな人が静かに眠っている。彼が好きだと言ってくれた私の好きな花を“沖田家之墓”と刻まれた墓石の前にお供えした。綺麗に磨かれたのを見ると、既に親族の方が来たことがうかがえる。彼とお別れをした日から今日でちょうど一年。今日は彼、沖田総司の命日。私はしゃがみ込んで両手を合わせ、決して返事をすることのない彼に話かけた。


「来るの遅くなっちゃって本当にごめんね。仕事、なかなか休みが取れなくて」


ひとりが寂しくないようにたくさん会いに来るよ、と誓ってからこの日まで、一度も来なかった私を総司はきっと天国で怒っているに違いない。でも最後には笑って許してくれる総司が頭に浮かんで自然と笑みが零れて、そして消えた。
静寂が訪れる。何から話そうかな。この一年で起こった出来事はそれはそれは波瀾万丈でとても1日じゃ話しきれない。無事に大学卒業して就職したよ、とか、仕事にも慣れてきたよとか、たくさん言いたいことはあったけど、とにかく会えて凄く嬉しいことを伝えようか。目を閉じて心の中で話しかけると、姿は見えないけどなんだか本当に目の前に総司がいるような感覚になった。


「…じゃあそろそろ帰るね、総司」


重たい腰を上げる。出来れば離れたくない。でもそれは無理だから最後に墓石に触れた。それは、あの日触れた動かなくなった総司の体のように冷たくて。胸が締め付けられたみたいに苦しくて悲しくて、どんなに願っても叶わない願いをポツリと呟いた。


「ねぇ、総司。…もう一度総司に会いたいよ」


サァっと暖かい一陣の風が吹いて私を包み込む。
懐かしい匂いが、した。


――


お墓参りが終わった後は総司の実家にお邪魔させてもらい、仏壇にお線香を焚いた。総司のお母さんは「泊まっていきな」と言ってくれたけど、明日も仕事があるから気持ちだけ受け取り帰宅することになった。
帰り道ではただ総司との思い出が頭の中を駆け巡っていた。出会いから付き合うに至るまで、付き合ってからのこと。すべての記憶が蘇る。懐かしいくて、それでいて切ない。そんな気分にさせられる大事な大事な思い出。

今日はお墓参りに行けて良かった。明日からまた頑張ろう。それと、もっと頻繁に会いに行くようにしよう。そう思ってマンションの階段を上ると、玄関の前に人影が見えた。暗くて分からないが、背が高い男性のようだった。私の家の前にいるってことは、私に何か用があるのかな?引っ越しの挨拶とか?
私は恐る恐る人影に話かける。


「あの、何か用ですか?」


私の声に振り返ったその人を見て私は目を見開いた。だって、その人は、


「そ、うじ」


一年前に病気で死んだはずの私の恋人、沖田総司だった。



ふたりが再び出逢う時

(会いたい、なんて、叶うはずのない願いだと思っていたのに)


110320
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