※狂っておられる





掴まれた腕が嫌な音を立てた。叫びたくなるその痛みを必死に堪えてもう片方で彼の頬にソッと触れれば金の瞳から流れた透明な雫が私の手を濡らした。目許に口づけると弛む掌。解放された腕は少し力を籠めただけで激痛が走った。
三成は虚ろな目で私を見下ろす。家康を殺してから彼はずっとこうだ。ああ、なんと可哀想なお人。何かに固執してでないと生きていけないだなんて。

「名前。貴様だけは私を一人にしてくれるな」

私に対する狂気染みた執着。僅かな拒否にも三成は反応を示して私の骨を握力で折るのだ。いつか私は彼に全ての骨を折られてまで傍に置かれ続けるだろう。それでも彼から離れない私も狂っているのでしょうか。

だって、私が居なくなったら誰が彼を愛してあげるのですか。


狂気を愛した(111019)
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