※学パロ 「君はどうしてこんなに頭が悪いんだい?」 「私が聞きたいよ」 竹中くんは、あからさまに大きなため息を吐いた。どうせなら気付かれないように吐いてほしいもんだ。…なんて文句を言える立場ではないんだけどね。 先日行われた期末テストで、見るも無惨に酷い点数を叩き出した私は、隣の席の竹中くんにとても可哀想な目で見られてしまった。反抗したい気持ちもあったのだけれど、順位を下から数えた方が早い私は頭の良い竹中くんに何も言い返せなかった。くそう、今日もカッコイイですね。 赤点を取った人には追試が行われるらしく、それに合格しないと夏休みはないという。夏休みはお祭り行ったり花火したりいっぱい予定があるのに!でも私だけじゃ絶対に追試に合格なんて出来ない…… 「何?そんな目で僕のこと見ないでくれないか」 「竹中くん…」 「勉強なら自分でやってくれ」 「そんなこと言わないで竹中くん!お願い勉強教えて何でもしますからぁぁあ」 「………」 ということで放課後限定で竹中くんは私の専属ティーチャーになったわけです。 「そこ違うよ。何度言ったら分かるんだい?」 「え?まじか」 「君は物覚えも悪いね」 「余計なお世話よ」 フンと鼻息を鳴らして間違っているらしい問題に再び目を通す。私は数学が他より少し苦手なだけであとはまぁまぁだもん。…赤点だったけど。 「ここはさっき教えた方程式を使うんだ」 「…こう?」 「そう。合ってる。よく出来ました」 「やったー!」 「でもここが違う」 「(ずーん)」 竹中くんは分かりやすく教えてくれる。けど鬼畜だ。教えるからには、やっぱりその辺は自分の中でもちゃんとしてるんだろうな。同じ人間なのに何でこんなにも違うんだろう。 「諦めて補修受けたらいいじゃないか」 「違うよ竹中くん。私はそれが嫌だから頑張ってるんだよ」 でもやっぱり竹中くんには悪いことしたな。半ば強引にお願いしちゃったから断れなかったのかもしれないし。竹中くんは優しい人だから心が痛い。 「ごめんね竹中くん」 「…どうして謝るんだい」 「だって、毎日勉強教えてくれてるのに私全然覚えられないし、竹中くんにだって予定があるのに…」 「…」 「や、やっぱ補修受けようかな!こんなんじゃ結果は変わらないもん」 はは、と私の乾いた笑い声を最後に教室は静かになった。重たい沈黙が続く。だがそれを破ったのは意外にも竹中くんだった。 「僕は誰にでも勉強を教えるような、そんな優しい人間じゃないよ」 「…竹中くん?」 「君に頼まれなきゃこんなお人好しみたいなことはやらないよ。君だからやるんだ」 「あの…」 「いくら頭の良くない君でも、僕が何を言いたいのか分かるよね?」 真剣な竹中くんの目が私を射抜く。ぐるぐると竹中くんの言葉が頭の中を廻る。もしかして、竹中くんは私のことが、好き?そそそそそりゃあ私も竹中くんのこと前から好きだけど、え、うそ、うそだ。 顔を赤くさせる私に得意気に笑って見せる竹中くんにいよいよ湯気が出るんじゃないかと思った。悔しい、けど、カッコイイ。 「私、頑張るね」 「うん」 「合格する」 「うん。応援してる」 「竹中くん」 「なに?」 「ありがとう」 「どういたしまして」 恋せよ、 少年少女 ◎おまけ (じゃあ僕は何をしてもらおうか)(…え?)(君が言ったんだよ。“何でもする”って)(え?え?)(そうだなぁ。僕と付き合ってくれないかい?)(え!いいんですか!)(ぜひ頼むよ) (そんなの全然オッケーに決まってる!) title by 水葬 (110814) |