私にとって秀吉様も半兵衛様も、ずっと側で仕えていたいと思える偉大な方たちだった。たとえ周りが彼らを嫌おうとも私には関係なく、ただただ彼らの役に立つ。それだけが私の唯一の世界。戦で成果を残せば秀吉様にお褒めの言葉を頂ける。執務中の半兵衛様にお茶をお持ちすれば、美味しいよとそのお顔に笑みを浮かべる。彼らの仕草や人柄が私は大好きだった。


だが世界はいつまでも廻ることはなく、むしろ呆気なく動きを止めてしまった。秀吉様と半兵衛様の死。病でこの世を去った半兵衛様は、最後まで私の好きな笑みを絶やすことはなかった。私はあの日動かなくなった手が冷たくなるまで握り続けた。
そして秀吉様は、かつて豊臣の傘下にいた徳川家康に命を奪われてしまった。そこで私は一度生きる意味を失った。誰かの為に生きていた私はもう自分の為に生きることは出来なくなっていたのだ。
戦国の世では死とはいつも隣り合わせだ。明日死ぬかもしれないし、一年後も生きているかもしれない。それは誰にも分からないこと。そんなことくらい分かっていたはずなのに、大切な人を失うのはやはり哀しいことだった。


けれど再び私の世界を動かし道しるべになってくれた人がいた。私のように彼らを崇拝していた三成様だ。彼は私と同じだった。誰かの為にしか生きられない私のように、家康を殺すことで生にしがみついていた。私はそんな三成様のお役に立ちたかった。

だけど、それも長くは続かなかった。

天下分け目の関ヶ原の戦いに我ら西軍は敗れ総大将である三成様は斬首の刑に処された。今度こそ私の世界は壊れた。私は涙を流して三成様の殺される瞬間を見つめた。全ては秀吉様と半兵衛様、そして民の為だった。その願いは叶うことなく、死の間際に見せた微笑みに、私はどうしようもなく切なくなった。



三成様は私に「お前は生きろ」と言う。それは昔秀吉様と半兵衛様にも言われた言葉でもあった。だから私は、私には自分たちの分も生きてほしいと思う彼らの願いを背負い、叶える為に生きていく。だけど、それでもたまに思ってしまうのです。


(110804)
一応三成夢です
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