※トリップヒロイン


何をどうしたら平成から戦国時代に来てしまうんだろうか。これは所謂タイムトリップってやつ。そんなの漫画やアニメなど二次元の世界だけだと思っていたのに。来てしまったものは仕方ないので今更文句を垂れるつもりもないけど。なんだかんだここに来て今日で十日が経とうとしていた。


「三成さん」
「何だ」
「一つ良いですか」
「何だ」
「毎日私を監視してますが私はただの女子高生です。あと四六時中監視も鬱陶しいのでそろそろどっか行って下さい」


この世界に来た時は戦の真っ只中で、よりによって本陣に私は現れてしまった。なんと後世に語り継がれる有名な武将、豊臣秀吉の本陣。驚愕に包まれる中で首筋に宛てがわれた冷たい何か。平和になった日本では持つことは許されない日本刀。その刀の持ち主は竹中半兵衛という人物。豊臣の天才軍師として有名らしいが、ちょっと存じない。まあそいつが後の凶王石田三成に私の監視を命じたのだ。豊臣秀吉と竹中半兵衛にはやたら忠誠心が強い三成さんは、二人の命令なら何でも実行するようなそんな人だ。


「これは半兵衛様の命だ。貴様の意志などどうでもいい」
「でも分かったでしょう?私は無力です」
「見れば分かる。だが今は有力か無力かは問題ではない」
「は?」


じゃあ何が問題で私は監禁されなくちゃならないの。放り出されたところで行く宛てもない私にとって衣食住があるのはかなり有り難いが、こんな素人でも分かるぐらいの敵意(殺意?)を振り撒かれれば精神的に病む。三成さんてば目つき悪いし口も悪い。世間話で盛り上がれる人でもなさそうだし。重たい溜め息が零れた。


「名前。貴様は未来から来たと言っていたな」
「ええ、まあ」
「半兵衛様は未来から来た貴様の知識を必要としている」
「え」
「名前には豊臣の為に働いてもらうと仰っていた」
「え、ちょっと待って!なら私を監視する必要なくね?」
「それは別の話だ」


同じだよ、心の中でポツリと呟いた。私はそっちに協力する立場なのに何だこの仕打ちは!……ああ、この時代にはそんなの関係ないんだ。逆らえば力でねじ伏せられるだけ。くっそー…私に剣術の嗜みがあれば何か変わったのかもしれない。


「監視を止めてくれればあなた方に協力します」
「貴様に拒否権は無い」
「…」


一刀両断とはまさにこのこと。私の意見など聞く気がないらしい。なんて奴だ。石田三成め。


「三成さん私の監視ばかりで飽きないですか?」
「ああ」
「へーそうですか」
「…」
「…」
「…」


気 ま ず い 。
お願いだから話を広げて下さい。何を話たらいいのかもわからないしもうこの人無理!あーわかりましたよ。雑用でも何でもこき使えばいいじゃないですか!逃げも隠れもしませんから。ハンッ!










拝啓父上殿、母上殿。

元気ですか?私は元気です。しばらくそちらに帰れそうにありません。というか帰り方がわかりません。どうか身体には気を付けて下さい。あと石田三成は情のカケラもない冷たい男だと歴史の教科書を訂正しておいて下さい。

名前より



もうどうにでもなれ


(110317)
適度に逆らえる強気なヒロイン
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