最初は政略結婚だった。貧しく滅びゆくしかなかった私の住む国。そんな時に彼の凶王石田三成様から縁談が持ち掛けられた。理由など考える必要はない。私の国は他に負けを知らぬ最強の鉄砲隊を所持していたのだ。当時領主であった私の父は、その話を快く引き受け一人娘の私を三成様に嫁がせた。

三成様に最初にお会いしたのは私が彼と挙式を挙げる日。真実を知らされていなかった私は、こちらの事情を知っていて利用した相手方と、相談もなく首を縦に振った父に憤りを感じずにはいられなかった。現実を呑み込めないまま私は三成様の正妻となった。
嫁いでももちろんそこに愛はない。それはお互いがそうであり、国が消えないのであればこれくらい安いものだと私自身も理解をした上で、ここでの暮らしを続けていた。

交わす言葉と言えば「お早う御座います」か「お休みなさいませ」のどちらか。慣れ合うつもりなど、私には全く無かった。


だけど、三成様は違った。彼は自ら私と距離を縮めようと、歩み寄ろうとして、ある日を境に私が床に入る前の僅かな時間だけ部屋に訪れるようになった。それも、ほぼ毎日。理由はわからない。ただ他愛もない話をした。
そうして三成様の心に徐々に触れた私は、自分でも気付かぬ内に彼に惹かれていたのだ。凶王と恐れられる彼は私の前では儚くて脆い、心の底から優しさの溢れるただの殿方だった。



そして、今日も彼はやって来る。そのお顔に笑みを浮かべて。



「三成様。今宵は月がとてもお美しゅう御座います」

「そうか。月が綺麗だと嬉しいか?」

「はい。闇夜に浮かぶ月は真に素敵に御座います」

「私もそう思う」



最初は政略結婚だった。そう、最初は。私は三成様をこんなにも愛してしまったから。
三成様がこの部屋を訪れる僅かな時間だけが三成様が私へ、私が三成様への愛を感じられる唯一の時間。二人はその刹那の為だけに毎日を生きる。



刹那に潜む
それは紛れもなく、真実の

110302
なんかよく分からなくなった(…)
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