三時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。それでも屋上から動く気にはなれずに、寝そべって空を見上げていた。入学して2ヶ月が経つ。最初は胸を弾ませた高校生活も、授業を受けてお昼を食べてまた授業を受けてそして家に帰る。そんな同じ事を繰り返す毎日に、私は飽き飽きしていた。



今日も良い天気だなー!ここは陰になるものもないから日向ぼっこには最適なんだよな。授業なんて出てる場合じゃない。ちょうど今の時間は俺の嫌いな化学の授業だしサボっていっか。その次は古典だから出ないと土方先生まじ鬼だかんなー。そんな事をダラダラと考えていたら屋上のドアが開く音がする。先生が探しに来たのかもしれないとこっそり上から覗く。一人の女子生徒だ。おいおいサボリか?なんて人の事を言える立場ではないが。その女の子は制服が汚れるのも気にせずその場に横になった。ただ空を見てる。なんとなく、俺はその子から目が放せなくて気付いたら声を掛けていた。




「何してんの?授業は?」

「…あなたに関係ないと思うけど」

「つれねーなぁ」


突然上から降ってきた声の方を上半身を起こして見上げると、男の子がこっちを頬杖をつきながら見ていた。見かけない人だ。こんな人いたっけ?まぁ居たところで私には関係ないけど。


「空を見てれば、何も考えずに済むの」

「悩み事でもあんのか?」

「だから、あなたには関係のないことでしょ」

「まーまー!そう言わずにさ!ここで会ったのも何かの縁だし?打ち明けてみろって!」

「………変な人」


男の子はジャンプして上から降りると私の横に座った。聞く気満々な名も知らぬ彼。この人は何でここにいたんだろうか?



「あなたは何でここに?」

「俺?今日いい天気だから日向ぼっこしてたんだ!空も綺麗だしな!」

「それだけ…?」

「え?うん」

「ふーん」


この人は私みたいな汚い心で空を見ていたのではなくて、純粋に空を見ていたのか。ただ、羨ましいと思った。


「私は、毎日に飽き飽きしてるから、授業とか、将来とか、本当にどうでもよくなって、いつも空見てる」

「…」

「入学した時はあんなにワクワクしてたのに、」

「深く考え過ぎじゃね?俺らにはまだまだ時間はいっぱいあんだぜ?」

「その、たくさんある時間を私は無駄にしそうなの」

「…じゃあさ!」


不意に頭を撫でられ彼の顔を見ると、例えるなら太陽の様な眩しい笑顔で私に言った。


「俺がおまえに楽しい毎日を教えてやるよ」

「あなた、が?」

「おう」 

彼は私に楽しい毎日を教えてくれると言う。私も、彼なら教えてくれるんじゃないかって、何故か直感で感じた。


「…じゃあ、よろしく」

「任せろって。よろしくな!えーっと…」

「名前」

「名前な。俺は平助。よし名前、明日から昼休み屋上な!」

「うん。ところで平助、何年?」

「二年だけど?」

「(二年?!)」

「おまえは?」

「い、一年…です」

「いいよ急に敬語にしなくたって!たったの一年の差だろ」

「そうだよね」

「(順応早ぇ…)」



平凡な毎日が輝き出す瞬間があるのなら、それはきっと貴方との出逢いでしょう

この先彼に恋するのは、また別のお話


(110223)
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