今日は朝から凄く良いお天気だ。我が主が崇拝する日輪も青空に浮かんでいる。雲一つ無い綺麗な空。ほんと、晴れて良かった。ここ数日は曇りが続いていて日輪が見え隠れしてばかりだったから。
日差しも暖かいので城内を散歩していると、安芸の領主こと我等が主・毛利元就様が縁側に腰掛け日輪を拝んでらっしゃった。


「元就様、お早う御座います」
「ぬしか」
「本日は真に良いお天気で御座いますね」
「やっと日輪が拝める。ああ……日輪よ…!」


日輪に両手を広げうっとりしている元就様。何か儀式のようにも見える。敬愛する日輪が見れて大層お喜びになられているようで。生き生きしている主を見るのは本当に久しぶりだと思った。


「今日は気温も暖かいですし、過ごしやすい一日になりそうですよ」
「それも全ては日輪のお陰よ」
「ふふ、そうですね」
「…」
「?」
「何を其処に突っ立っておる。早よう座らぬか」
「へ?!」


手首を捕まれたと思ったらそのまま引っ張られて縁側に座る形になった。私のような一兵士が元就様のお隣に座るだなんて…!慌てて立ち上がろうとすると「我が座れと言っておるのだぞ。大人しく座らぬか」と言われたので恐れ多いが隣に腰を下ろした。


「丁度甘味が余っておった。名前よ、残りを食べるがよい」
「えっあ、ありがとう、御座います……あっと、名前覚えて下さってたんですか?」


私は決して彼の重臣では無いのに、名前を覚えてくれていた事がとても嬉しかった。甘味を食べながら横目で元就様を見ると白く整った綺麗なお顔を真っ赤に染めて…え?真っ赤?


「ももも元就様ッ?お顔が真っ赤です!風邪など引かれたらたいへ、」
「風邪などではない!き、貴様の所為よ!」
「わ、私?!」
「貴様が変な事を突然言うからであろう!!」
「も、申し訳御座いません!」
「誰か謝れと言った!」
「(えーーッ!)」


どうしていいか分からずに二人でバタバタしていたら段々と疲れてきて肩で息をする。落ち着いたらしい元就様は咳払いをされて私の方を向いた。


「貴様、我が兵の名を呼ぶのがそれ程までに珍しいか」
「いえ…ただ、その、驚いてしまっただけです」
「…我は兵の名は貴様しか知らん」
「……あッ!!!」
「騒がしい奴よ、一体何ぞ」





元就様!日輪が隠れちゃいました


(………)
(さっきまで晴れてたのに雲が…。あ、元就様何か仰ってましたよね?)
(もうよいわ…)
(?)


名前を知っていたのは、元就がヒロインのことを気にしていたからだといいですね^^(110203)
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