「あ、この簪可愛いー…げ!高っ!」


御館様に許可を頂いて城下町までやって来た私は、久しぶりの休暇を思う存分に楽しんでいた。
時たまこうして息抜きをさせて貰えてるのはきっと私が女で、人一倍城下町が好きだからだと思う。実際男である幸村や佐助は休む間もなく働いているし、休暇を取ってるところを見たことは一度も無かった。


「なんか私だけ悪いな」


何だか、罪悪感。けれどもそんな彼女の罪悪感も、とある物を見つけた途端に何処かへ消えていった。


「おお嬢ちゃん。今日は仕事は無いんか?」

「ええ、そうなんです。御館様に休暇を頂いたんですよ」

「そうかい。じゃあ団子食ってけ!」

「じゃあ二本下さい」


そう、休みには必ず食べる大好きな団子屋の団子を見つけたのだ。城下町に来ると訪れる店の一つで、店主のおじさんには顔を覚えられた。

団子を食べながら城を出る前に会った赤を思い出す。「城下町に行ってくるね」「そうか。道中はくれぐれも気を付けるのだぞ」「うん、わかった。ありがと」「うむ!」鍛練をしていたのか、大量の汗を手拭いで拭う幸村に手を振った。そう言えば彼はは大の団子好き。というか甘味が大好きだ。そうだ、頑張っている彼に、私からの御褒美をあげようかな。よし、そうしよう。


「おじさん、お団子お持ち帰りしても良いですか?」

「勿論だよ!あの赤い兄ちゃんにかい?」

「ふふ、はい。団子に目が無くて」

「はいよ。それで?何本持ってくか?」

「えっと、じゃあ――」







「幸村ー!」

「?名前か。今日は随分と早いで御座るな」

「ねぇ幸村、鍛練はちょっと休憩にして団子食べよ」

「何?!今何と言うた?」

「だから、団子!」


ほら!と指を差した方をくるりと向いた幸村は、目を輝かせて(背中しか見えないけど、きっとそう)団子に飛び付き口いっぱいに団子を頬張った。


「そんな一気に食べたら喉に詰まらせ」

「うぐっ」

「って遅かった…」


胸の辺りをどんどんと叩く彼にお茶を差し出すとそれもみるみるうちに無くなった。呆れた笑みしか出ない。


「これ全部幸村のだから、慌てずに食べなよ」

「お主は食べぬのか?」

「私?私は食べたから」

「そうか?では遠慮無く頂戴致す!」

「どうぞどうぞ」


再び団子に食らいつく姿を隣に座って見ていると、手を休めた幸村がじっと私を見てきた。なに、と口を開きかけた瞬間に串が口に突っ込まれた。


「名前も食べろ!俺一人では食事もつまらんだろう!」

「(もぐもぐ、コクン)」

「よし」


結局一緒に団子を食べて、お腹いっぱいになった私たちは縁側に寝そべった。団子は後数本残ったまま。


「幸村…鍛練は?」

「実は其も今日は休暇の日故…構わぬ…」

「眠いの…?ゆきむら」

「眠いのは名前であろう」

「ねむくなんて…な、い」

「(すーすー)」

「(すー)」





とある日の昼下がり


(見て見て!幸村様と名前様が寄り添って寝てらっしゃるわ!)
(あら本当!)
(二人共可愛らしいわ!)
(女中の皆さん、そんな所で何してんの?)
(猿飛様、ご覧下さい!)
(あら?あらら?真田の旦那と……名前ちゃん?)
(お団子を召し上がった後に寝て仕舞われたみたいなの)
((団子が残ってる…。一体何本買って来たんだ?))


110203
佐助はとりあえず買ってきた団子の本数のが気になったらしい\(^o^)/幸村の一つ目はほのぼのになりました。
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