「三人揃って何処に行くつもりなの?」

こそこそと門を出ようとする三つの影に声を掛けると、そのうちの二つが大袈裟に肩を揺らした。平助、永倉さん、原田さん。この三人が昼間から揃って出掛けるなんてお酒を呑みに行く時ぐらいだ。周りの目を盗んでいたあたり、今回も副長に内緒で行こうとしてるに違いない。

「っ?!名前ちゃん!」
「なんだよお前かよ。驚かせんなって」

平助と永倉さんは胸を撫で下ろすが、私だからといって安心されては困る。これを見たからには易々と行かせるわけには行かないのだ。人がこうして働いてるというのに休暇でもない日に遊ばれたら只でさえ人手不足なのに堪ったもんじゃない。

「安心してる所悪いですけど、私なら見逃してくれると思ったら大間違いですからね」
「んなっ、まじかよ!」
「あ、あれだよ名前ちゃん!俺たちは島原なんかじゃなくてだな、」
「また島原に行こうとしてたんですね。昨日も行ってたくせに」
「知ってたのか!?」
「…やっぱり」
「おい墓穴掘ってどうすんだよ。新八」

原田さんがやれやれと溜め息を吐いて額に手を宛てた。溜め息吐きたいのは私の方よ。だいたいこの人たちには新撰組の幹部って自覚が無さすぎる。だから私たちみたいなしたっぱが苦労するんだから。

「き、今からみんなで素振りしようとしてたんだよ!なぁ?!」
「(でかした平助!)おう!体が鈍っちまうからな!」
「嘘。目泳いでる」
「な、なぁ、左乃からも何とか言ってくれよ」
「ん?ああ…」

困ったように永倉さんが原田さんに助けを求めた。原田さんは少し考える素振りを見せて私に近づく。

「何ですか?原田さんにお願いされたって私──…」

次の瞬間目の前に広がる原田さんの顔。永倉さんと平助がぎゃあぎゃあ騒いでるのも気にならないくらい、今起こっているこの状況を理解しようと必死で。彼に口づけされたと気付くのに、だいぶ時間がかかってしまった。

「んん……はっ、はらだ、さん…?」
「悪いな名前。土方さんには内緒にしといてくれよ」
「は?」
「じゃあな」

あの隙に逃げたのか、他の二人にはもういなかった。
ゆっくりと歩を進める原田さんを追い掛けて捕まえられたのだけれど、私はその場にへたり込んだ。熱を未だ持ち続ける唇に触れる。心臓がやけにうるさいのはきっと、貴方のせい。


のみこまれたくちびる

(111030)
初の左乃さん。大胆な左乃が好きです
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