「平助、星が綺麗だよ」

「…そうだな」


夜空に浮かぶ星がピカピカと光っている。小さくて、私にはそれがとても儚く見えた。でも遠くの光がここまで届くのは凄いことで、灯りのないこの地上を月と一緒に照らしてくれる。
なんとなく星を掴めそうな気がして手を伸ばせば、血に濡れた手のひらは空気を掴んだだけだった。閉じた手をゆっくり開けば、星ではなくてそこにあったのは一面の赤で。同じものが私のお腹から流れている。生暖かいそれは地面を濡らす。隣に寝そべる平助も同様だった。

もうすぐ命が尽きるというのに恐怖などまったくなくむしろ穏やかな気持ちだ。それは隣に平助がいるからなのか、はたまた死とはそういうものなのか。


「平助。人は死んだら空に昇って星になるんだって。私たちも星になれるかな?」

「どうだろうな。星どころか天にすら昇れねぇかもな…」

「…」

「俺たちは人を殺めすぎたからな…」


平助は自嘲気味に笑う。地獄に堕ちるかもしれないってことを言っているんだろうけど、最期くらい何かを望むことくらい私は許されると思うの。


「私は、平助も天国へ行けると思う」

「そう、だといいな」

「行けるよ。絶対に」


ついに視界が霞んできていよいよかと悟った。平助の手を震える手で手探りで探す。その手に触れれば私の手よりもずっとずっと冷たかった。


「名前の手…冷てー」

「平助の方が冷たいよ」

「名前のが冷たい」

「…平助。もう私たち戦わなくていいんだね」

「…ああ」

「争いも、憎しみも、涙も血も、何もかもない世界に、行けたら、いいなぁ…」

「行けるさ、名前なら」


力の入らなくなった手で出来るだけ強く手を握った。この手がこの体が、感覚を失いもうすぐ動かなくなる。でも平助がいれば何も怖くない。

最後の時、私は誰に言うわけでもなくただ静かに呟いた。


「できれば、同じばしょに、行きたい、かな」


平助が、笑った。





title by hmr
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