「いったーい!」 「煩い。大人しくしていろ」 「じゃあもう少し優しく手当てしてよ一君!いたっ」 「無茶するからだよ、名前」 「もう笑ってないで助けてよ総ちゃん!!」 巡回中に怪我を負った名前は一君の手荒な手当てに叫び声を上げた。そりゃそうだ。手に負った傷は男でさえも悲鳴を上げてしまいそうなくらい酷い。だが名前は決して泣きはしなかった。むしろその手荒さに泣いているみたいだ。 手荒にしたくなる一君の気持ちは凄く分かる。大切に大切に育てられて来た名前は新撰組隊士にとって可愛くて仕方ない。そんな存在がこんな酷い怪我をして、万が一傷が残ってみろ、みんなから何て言われるか。とか言いつつ俺も名前が大事で仕方ない。それはみんなと少しだけ違う感情もあるけど、怪我なんてしてほしくねぇのは一緒だ。 「終わりだ」 「はぁー…」 「お疲れ様」 「何よその楽しそうな顔は」 「え?そんな顔してないよ。ただ珍しく名前の痛がる姿が見れたなと思ってね」 「総ちゃんひどい…」 「はは。嘘だよ。お大事に」 「ん」 部屋の外にいた俺は、総司と一君と入れ違いで中に入った。名前は包帯を巻かれた手を動かしづらそうにしていた。 「ほどくなよ」 「あ、平助。ほどかないよ。だって悲惨だもん」 「…痛むか?」 「一君の手当ては正しいけど手荒だよ。また痛くなってきた」 でも大丈夫だよって言いながら名前は笑ったけど俺は何だかとても悲しくなった。大丈夫かもしんねーけど、俺は、 「あんま無茶しないでくれよ頼むから」 「…これは私がヘマして負った怪我なんだから私自身の失態だよ。平助がそんな顔する必要ないよ」 「違う。俺はただ、お前に」 怪我してほしくないだけなんだよ。 「うん。分かってるよ。ありがとう、平助。ありがとう、大事にしてくれて」 名前は、本当に嬉しそうに笑った。みんなこの笑顔があるから頑張れるんだな、ってなんとなく思った。だけどそれに力をもらってるのは俺なわけで。 結局こいつには適わない。 「もう無茶はしないって俺と約束しろ!」 「わかった。約束するよ」 「それでよし!」 きみなんて僕の手の中でただ守られていてくれればいいのに 女ってのは黙って男に守られてればいいんだよ title by hmr 110813 |