何で私だけがこんな不憫な体質なのだろうか。こんな身体じゃなかったらもっと色んな事が出来たのに、世界は残酷だとつくづく思う。
出来れば魔法だって習って見たかったし、閉じ籠ってばかりじゃなくてたくさん出掛けて買い物したり他国に旅行もしてみたい。みんなが当たり前にやる事を私も当たり前のようにやりたかった。
例えば今みたいに裕福な暮らしじゃなくても外で元気に走り回って、家に帰れば家族がいてっていう平凡な幸せなとかあったんじゃないかって思ったりもする。けどそれはあくまで私の夢物語であり、現実はそう上手くはいかない。

こうやって何もかもが嫌になって自室に引きこもるのも少なくなくて、その度にジュダルや待女に多大な迷惑を掛けている。銀行屋はこれが私の運命だと言うけど、はいそうですかって素直に受け止められる程私は大人じゃない。
それもこれも銀行屋が私を縛ったりしなければ外にだって行けるのに。自分の身体のことは私が一番知ってるから、具合がどうとか危なくないかぐらいすぐにわかるわ。

部屋の角で、膝を抱えてうずくまる。じわり。涙が滲む。泣くな、泣くな。私は泣きたくなんかないの。
ぎゅっと服の裾を握り締めたと同時に頭に手が乗る。これは、ジュダルの手。来てくれたんだ。いつも迷惑掛けてごめんなさい。謝りたいのに何でだろう言葉が出ない。



「名前、お前が望むなら俺がなんだって叶えてやる。何がいい?」



顔を上げて彼の表情を窺う。悲しい顔、してる。他でもない私がそうさせた。今度は違う理由で泣きそうになる。私がわがまま言ってばかりだからきっと呆れられたに違いない。
いつもそう。ジュダルの笑顔を奪うまで気付かないで、終わったあとに後悔をする。それでまた自己嫌悪して自分がもっと嫌いになっていく。



「ジュダル、わらって」



私は何も望んじゃいけないけどジュダルがいるって思い出すだけで心がすっと軽くなるのは何でだろう。ジュダルに出会えただけでも幸せなのに、これ以上に何を望むと言うの。もしもこんな体質じゃなければ、なんて私が私である限りもしもなんてあり得ないのに。



「は?」
「私はジュダルに笑ってて欲しいよ」
「…そういうことじゃねーよ、バカ名前」



私を抱き寄せる腕が痛いくらいに優しくて今度こそ涙が溢れた。
ジュダルは笑顔が素敵な人だから私の分もたくさん笑ってて欲しいの。
気にかけてくれてありがとうジュダル。貴方の優しさに触れられて、私、今とても幸せだよ。


13'0225
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