私の背後にはアル・サーメンという謎の巨大組織がいる。いつも怪しげな格好をしたこれまた怪しげな集団。怪しげ、と言ってはみたが、何を隠そう私はこの組織によって育てられた人間である。ジュダルもまた同様に組織に育てられた、私にとっての幼馴染みという存在。
小さい頃は年が近いというだけで彼とはよく遊んだものだ。遊ぶ、と言うよりはジュダルの魔法の練習を眺めているばかりだったけれど。この頃のジュダルのルフは、まだ真っ白だったっけ。
ルフが黒く染まることが何を意味するのか私には分からないけど、彼の周りを飛ぶルフはいつだって綺麗。白くても黒くても関係ない。ルフはルフ。ジュダルはジュダルだ。



「ここにいたのか」



庭いっぱいに咲く花を眺めていると、背中に声が掛かった。そこにいたのは銀行屋で。いつもと同じで怪しい服装に、相変わらず詠めない表情。なるべく会いたくない内の一人であるが、こうして定期的に会うことになるのはどうしてなのか。



「…何」
「そう警戒せずともよい。マギが主を探しておられたので声を掛けたまで」
「ジュダルが?」



そう言えば、ジュダルの用事が終わったら魔力を与えもらう約束してたんだっけ。すっかり忘れてた。普段は彼のルフや魔力のお陰で私の居場所が分かるらしいが、少なくなればなるほど気配を感じられなくなるって前に言ってたような。そうだとしたら、というか絶対そうだからすぐに行かなくては。



「焦って転ぶでないぞ、"ルフ無き娘"よ」



踵を返した私は思わず足を止めた。
ルフ無き娘。銀行屋…アル・サーメンは私をそう呼ぶ。なんという嫌味だろうか。ルフがなければすぐにでも死んでしまう身体。私だってになりたくてこんな身体になったんじゃないのに。
銀行屋を無視し、一度止めた足を動かし早急に庭から立ち去った。誰が転ぶか、馬鹿。やっぱり、あの人たちはどうも苦手だ。


感情のない瞳で見られると身体が固まったみたいに動けなくなる。脳に響くように鳴る声が嫌い。何がしたいのかも何をしようとしてるのかも全然分からない。

ああ、そうか。私は彼らが苦手なんじゃない。どうしようもないぐらいに彼らが怖くて仕方ないんだ。きっとそう。


13'0220
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