今日は朝から身体の調子が悪くてベッドから一歩も動けずにいた。昨日もちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ怠くて仕事を早退させてもらい早めに休んだのだけど、次の日になっても良くなるどころかむしろ容態は悪化していた。
見兼ねた待女が薬を用意するか私に尋ねたが、適当に理由を付けて丁重に断る。
これが風邪からくる症状ではないことを、私はよく知っている。病気じゃない。でも、治す術はない。
少しでも体調を治そうと飛んでいるルフに手を伸ばす。触れた指先からルフがそのまま染み込んで身体の奥が僅かに温かくなっていく。同じことを繰り返すうちに数日前よりだいぶルフの数が減ってしまったように思える。
あの人が与えてくれた大事なルフ。大事な大事な、命の源。



「名前」
「ジュダル。おかえりなさい」
「…顔色わりーな」



遠方の国に出掛けていたジュダルが帰ってきたようで私の様子を見に部屋を訪れた。いつもなら「おかえり」と言えばちゃんと返事をしてくれるのに無視して私の顔色を見るなり眉間に皺を寄せたジュダル。睨まれてるみたいで少し怖いけど、これは怒ってるんじゃなくて心配してる彼特有の合図みたいなもの。
だから私は大丈夫の意を込めて笑う。そうするとね、ジュダルの纏う雰囲気が少しだけ柔らかくなるの。ほら、優しい目になった。



「予定より遅かったね」
「あー、まぁな。思うように事が運ばなかったんだよ」
「そっか。お疲れ様」
「別に疲れてなんかねーよ」
「うん、そうだね」



ジュダルの大きなてのひらが冷たい私の頬に触れると、二人の身体が淡く光りだす。一層ルフがざわめき、彼のてのひらを伝わってルフが流れ込んできた。不思議なことに黒いルフは私の肌に触れる直前で白いルフへと姿を変える。理由は分からないけどジュダルが、ジュダルのルフたちが私に命を与えてくれているということだけは分かった。とても心地好い感覚に意識が微睡む。



「こんなもんでいいだろ」
「ありがと」
「少し寝るか?」
「ん…」



こうして一度に大量のルフが干渉するとその反動でいつも眠くなってしまう。せっかく久しぶりに会えたしたくさん話したいことがあったけど、起きてからでもいいよね。


ルフをもらったその日、彼のルフと香りに包まれながら必ず幸せな夢を見る。とても、とても幸せな夢を。


13'0214
ルフがいないと生きられない女の子とジュダルのお話
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