「せめて楽に逝かせてあげる」




















私は今まで自分が何のために生かされているのかわからなかった。

私には国が求める力も組織が期待するものも何一つとして持ってなくて、それでも生かされていう立場にいることや何も知らないでいることがとてつもなく怖かった。
私が存在する意味は何なのか。何のために存在しているのか。18年もの間、理由も分からず生かされ理由なく生き続けることが苦しい時が何度もあった。


これまでの人生を、「運命」や「宿命」という一言で終わらせることだって出来る。だってそうすれば可哀想で惨めな自分を簡単に受け入れてしまえるから。
受け入れてしまえば後は時の流れに全てを委ねるだけでいいもの。恨むだとか憎むだとか負の感情に身を任せるのも一つの手段だが、私には出来ない。恨むことも憎むことも、ましてや運命だから仕方ないと受け入れてしまうことも…。私には出来なかった。



体質のせいですぐに終わるはずだった命がジュダルのお陰でこの年まで繋がった。こんな命だからジュダルに出会え、こうして生きていられる。
「強い人が好き」そういって表情を輝かせるのに弱い私にいつも優しさをくれた。
全てのことに理由なんて無くても、私にはジュダルと出会えたことだけが人生の宝であり希望だったのは変えられない事実だった。

ジュダルはかけがえのない存在。



「ボルグ?!貴女、いつの間に魔法を」



彼と過ごした人生を、どうして呪うことが出来ようか。



(これが、ボルグ…)



ボルグ…光の防壁の中は、ジュダルのルフに包まれているような温かさがある。そんな心地好い温かさの中で意識が徐々に遠退いていくことが当然のことのように思えた。


本音を言うと、あの時私は紅玉様を羨むと同時に彼女に激しく嫉妬していた。ジュダルを取られてしまったみたいで悲しかったし、私じゃない誰かに向ける笑顔が堪らなく恋しかった。
叶うなら私にだけその笑顔を向けて欲しい。いつも彼の全てを受け止めるのは私だけであって欲しい。

彼の、ジュダルの隣にいつまでも並んでいたい。



(あぁ、そうか、わたしは…)



いつの間にか…いや、多分ずっと前から彼のことが−−−



「名前!!!!」



ボルグが消滅し、床に倒れる直前だった私の身体を誰かの力強い腕が支える。うまく息が出来ず呼吸は苦しくなるばかりで、耳ももうよく聞こえない。
だけど、だけど、ジュダルの声がした気がするんだ。目が霞んでいてよく見えないけど、もしかしたらジュダルが近くにいるのかもしれない。
そんなわけないかもしれない。都合の良い夢を見ているだけかもしれない。そうだ。次に目を開けたらまた淋しい現実が待っているんだ。

夢でもいいから、もしも近くにいるなら話を聞いて。
貴方に伝えたいことがたくさんあるの。
だからお願い。遠ざけないで。



「……、………」



あのね、ジュダル、私ね、


14'0908
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