「名前様、少し休まれては如何でしょうか?」
「ううん。今日中に終わらせなきゃならない書類があるから」
「ですが、ここ数日まともに寝ていらっしゃらないのでは?顔色も悪いですし…」
「私なら大丈夫。ありがとう」



もう下がっていいよ。
私がそう言うと女官の凛麗(りんれい)は渋々といった様子で一度頭を下げてから部屋を出ていった。
色々考えてしまうのが嫌で数日前から仕事に明け暮れているのだから彼女が心配するのも無理はなかった。その姿は周りから見ていてさぞかし痛々しいことだろう。
しかし他人にどう映っていようが何かに没頭してしまえば嫌なことも全て考えなくて済むもの。終わらせなければならない仕事があるのも事実。だから普段より自分の身体に鞭を打ち、こうして凛麗の目を気にしないふりをしながら働くのだ。



(そもそもジュダル仕事溜めすぎ…)



机に向かうのが性に合わないのは分かる。頭を使うより身体を動かした方が彼に似合ってるのもよく分かる。が、仕事してくれと言いたい気持ちでいっぱいだ。
ジュダルのサボり癖は本当に困ったもので、部下が必死になって彼の尻拭いをしてる姿を頻繁に目にする。誰も彼に逆らえないから感情に任せて怒りを撒き散らしはしないものの、中には泣きながらジュダルを探し回る者もいる。そんな部下の姿を見ていられなくて、数年前から仕事を手伝っているのだが。
それでも私たちにも限度があるわけで。まったく、神官としてもっとしっかり仕事してもらわないとたくさんの人が困るのに。書類の中にはジュダルじゃなきゃどうしようもないものがたくさんあるんだから。

内心で悪態をつきながらも仕事をもらえるのは有り難いことで、お陰で私は今もここで暮らしていける。働いてなかったらとっくに殺されていたことだろう。そう思うと背中がゾッとする。



「やっと終わった……」



終業時間はとっくに過ぎ、空には既に月が顔を覗かせていた。今は夕食時で私も皆と同様に食事を摂るべきなのだが、最近あまり食欲がなくどうにも食べる気が起きないのだ。
ジュダルに知られるとうるさいからそろそろ何かしら食べないとなぁ。後で厨房借りて卵粥でも作って食べよう。それから今日は早めに寝よう。
と、この後の予定を考えつつ席を立てば、ぐにゃりと歪む視界。机に手を付きふらつく足をなんとか支えたが、次には激しい頭痛に襲われぐらりと傾く身体。
地面にぶつかる直前で意識はシャットダウンし、そのまま深い闇に沈んでいった。


13'0310
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