「バカ、変態っ、おっぱい星人!」
「いて!なにも殴ることねーだろ!」
「大輝なんておっぱいに埋もれて窒息しちゃえ!」
「意味わかんねぇよ!だいたい俺は本当の事を言、っいで!!」



最低最低最低最低。大輝なんて大ッ嫌い!そんなに巨乳がいいならさっさと巨乳美女のとこへでもどこでも行けばいいじゃない。後ろから勝手に人の胸揉んどいて何が「相変わらず貧乳だな」だバカ。言われなくても分かってるっつーの!アンタのために少しでも大きくなるように毎日毎日頑張ってるってのに大輝はほんとデリカシーがないんだから!

走って走って着いたのは誰もいない屋上。ドアを開け放つと同時に頬を伝う涙。ポロポロと溢れるそれを拭いもせずにその場にうずくまった。悔しくて、辛くて、悲しくて。大輝が巨乳好きなのは付き合う前から知ってた。それでも付き合えたからには彼に似合う女になろうと必死に努力してきたのに。大輝の、


「…バカ」
「誰がバカだって?」


ふわっと大好きな香りがして後ろから抱き締められた。見なくてもわかる、大輝だ。走って探してくれたんだろう。呼吸が荒い。
それが妙に嬉しいと思うのに、素直になれない自分がいる。泣き顔をバカ大輝に見られたくないのと、何より、もう傷付きたくないはないのだ。彼氏に貧乳と言われて傷付かない彼女なんてどこにもいない。


「なんでわかったの」
「バーカ。お前の行きそうな場所ぐらい予想つくっつーの」
「放っておいてよ。貧乳は興味ないんでしょ」
「あー…なんだ。その、悪かったよ、貧乳なんて言って」


だから、こっち向けよ。っていつもよりちょっと低い声に背中がぞくっとした。それでも向かずにいる私に痺れを切らした大輝は私の首筋に顔を埋めて、あろうことかぺろっと舐めたのだ。


「な、なななななッ?!」
「おーやっと向いたか」
「何してんだ!」
「首舐めた」
「そうじゃなくて…っ!」


多分いまの私は耳まで真っ赤だと思う。まんまと振り向かされた私は慌てて涙を拭って大輝と向き合う。彼にしては珍しく少し視線を下に向けていた。


「気にしてたんだな」


何を、なんて野暮な粉とは聞かない。わたしは充分にそれで傷付いてきたからだ。


「だ、大輝が…ッ、貧乳って言うから…」
「事実だろうが」
「わかってるよ…!わかってるから大輝のために頑張ってんじゃんかぁ…」


引っ込んだはずの涙で再び視界が滲む。そんな私を見て大輝は優しく私を抱き寄せる。胸に顔を押し付けられ、ゆっくり背中を撫でられた。私は、彼の背中に腕を回して静かに泣いた。


「知ってるよ」
「だい、き…?」
「名前が俺のために頑張ってんの、ちゃんと知ってるから」
「じゃあ、なんで…」
「そんなの決まってんじゃん」

「お前の慌てるとこが見たいんだよ、俺は」


大輝は私に目線を合わせるように屈んで、ニカッと笑った。


「それに、彼女の胸を大きくするのは彼氏の仕事ってな!」
「やっぱ最低だ…」
「まぁ付き合いたての頃よりはおっきくなったんじゃね?」
「ちょ、さり気無く揉むな!」
「あーやべー。興奮してきた…」
「この変態が!」


変態彼氏
12'0924
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