「惇にい〜!」

幼い舌足らずな声に書簡に向けてした視線を上げれば、名前が笑顔で手を振りながら走ってきた。

「お早う、惇にい」
「ああ、今日もお前は元気だな」
「えへへ」

頭をがしがしと撫でればゆるゆると表情を緩めて、嬉しそうに笑む。随分と懐かれたものだ。然るべき時がきたら、この笑顔も他の男のものになるのだと考えただけで目頭が熱くなりそうだ。

「惇にい、またお仕事?」
「ああ」
「疲れてない?」

心配そうに眉を下げて訊ねてくる名前に、仕事の後にお前の遊びの相手になれるくらいには元気だぞと告げれば、途端に嬉しそうにやったあと飛び跳ねる。疲れていないと言えば嘘になるが、名前の笑顔をみていればそんな疲れも飛ぶというものだ。
少し待ってろよと撫でていた手を離し再び書簡に向けようとすれば、名残惜しそうに手を見つめてくるものだから、なんとも苦い思いが胸中を満たす。しかしそれも束の間、惇にいのお肩たたいてあげる!なんて袖をたくしあげながら言ってきた。

「とんとんとん」

幼子故にその力は微力ではあるが、背伸びして腕を伸ばし、楽しそうな声音で頑張っている名前を見れば本当に疲れが飛んでいくような気がした。

「どうですかー?惇にい」
「ああ、上手いぞ。名前は立派な嫁さんになれるな」
「本当に?じゃあじゃあ、惇にいのお嫁さんになれる!?」

可愛いことを言ってくれる。
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