彼女ね不器用なの、わかってあげてね。誰かがそう言った。いつも泣きそうな顔でわらう女の話だ。性格も仕事の出来も悪くはない、むしろ器用にすら見えるが、随分とまあへたくそにわらうものだ。

「うまくわらえてたと、おもったのになあ」
「よく言う。随分とへたくそな笑みだ」
「 そうおっしゃるのは、姜維様がはじめて、です」

すっかりやせ細ってしまった彼女の腕がゆらりと上がる。それを拾い上げると、あたたかさに涙が出そうになった。青白い肌、痩せ細った肢体、もう長くはないことは明らかであった。それはわかってはいるのだが、自分のなかの何処かがそれを認めきれずにいる。

「一度でもいいから、お前が心からわらった顔がみたかった」

そう言えば、彼女はまたいつものへたくそな笑みを浮かべるだけであった。それが、答えだった。

「わたし、姜維様にお仕えできて…しあわせ、でした よ」

ぱたり、落ちた手が寝台のうえに転がる。彼女の最期の言葉がぐるぐるとまわった。なら、そう思うなら何故そんなにも泣きそうな顔で笑ったのだ。
君が置いてった心臓を僕は大事に拾い上げる
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