「あっつーい」
「…」
「あづいあづいあっづーい」
「黙れ、余計暑くなる」

もう夏なのではないかと思わずカレンダーを見れば、日付はまだ六月の上旬であった。なんだ、世間ではもうすぐ梅雨の季節ってときにこの暑さは。

「もうだめ…仲達、二人でオーロラ見に行こうよ」
「貴様が行け。そして帰ってくるな」
「え ひどくね?」
「ええい!貴様がガキのように喚くから集中できんわ!」

眉間の皺を普段よりさらに増やしている仲達は、ずっと睨みつけていたパソコンのキーボードをばんと叩いた。ガチャガチャと音が鳴る。

「そのガチャガチャうっさいんだよね。風鈴の音にしてよ」
「無理を言うな。キーボードを打つたびに風鈴の音色などふざけている」
「まあ風鈴の音で涼しくなるんなら苦労はしないんだけどねえ…ほい!」

冷凍庫からアイスを二つ取り出し一つを投げつければ、仲達は何食わぬ顔で受け取る。その些細な行動でさえ様になる格好良さだが、残念こいつの性格最悪です。

「こんなクソ暑いときに仕事なんてよくやるよねえ」
「暑いのは皆一緒だ。後に回せば溜まるだけ、なんの解決にもならん」

涼しげな青色のそれを名前のとおりガリガリと食べながら仲達は言う。この仕事馬鹿め、少しは構えよ。口を尖らせてそう言えば、仲達はにやりと挑発するように笑う。

「なんだ、構ってほしいのか」

安価なアイス片手にそんなことを言ったってきゅんとしたりしないんだからね!

「だって暇なの」
「ならば何処かに出掛けてこい。小遣いならくれてやる」
「ガキ扱いかよコノヤロウ。この天下一の無糖男め!もう仲達なんか知らな、んむ」

食べかけのアイスを突っ込まれ言葉を詰まらせる。

「ただのガキになど興味はない。そんなこともわからず今まで共にいたのか」
「へ、」
「そうか、貴様ももうガキではないというなら、私もそれ相応の扱いをせねばなるまい」

今よりさらに暑くなるが構わないのか。にやりと口角を上げ、私の手に溶けて垂れていたアイスをぺろりと舐めてきた仲達は、悔しいがやっぱり格好良かった。かっと顔に熱が集まる。ああこれ、アイスと一緒に私の脳も溶けたかもしれない。

溶けたのはアイスと子供のわたし
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