!)ちょいと注意

最近お腹回りが気になるなあお菓子食べ過ぎたかなあ、ひょっとして幸せ太りってやつかなあと思いながらチャンネルを回していたら、ダイエット特集なんていうのをやっていた。簡単お手軽にできるとかいうあれである。スタイルの良い女の人が椅子に座ってやっているのを見て、おやタイムリーと早速ソファに座ったまま夢中になってやっていたら、突然女の人の映像がぐるりと回って今度は視界いっぱいに張遼がうつった。不機嫌そうなその表情に、そういえば張遼が何か話してたけどテレビに夢中で聞けてなかったなあなんてぽつりと思った。

「えっと、この体勢はちょっと色々とマズイのでとりあえず起きようか」
「断る」

即答ですか、はいありがとうございます!
ワントゥーワントゥーと弾むように喋るスレンダーな女の人は張遼のリモコン操作によりぷっつんと姿を消した。それにしても、構ってもらえないからって拗ねるなんて、張遼も可愛らしいところがあるんだなあなんて能天気に考える。とにかくそんなことを考えていないとどうにかなってしまいそうなのだ。

「張遼、」
「文遠と呼べと前にも言った筈だ」
「……文遠…は、恰好良すぎるから心臓にわるい…!」
「しかし私もいい加減我慢の限界だ」

今まで女の子の日だからとか、下着の柄が上は苺で下は水玉で違うから無理だとか、そんな理由で断られてきた。まあ初めてだと言うし生娘ならばそう急くわけにもいくまいと、今までは名前の意見を尊重してきていた張遼であったが、さすがにもう我慢の限界であった。

「わわわわたし、今日は女の子の日で…」
「それは前にも聞いた」
「えと、最近ほら、太ってきたから…」
「私はそんなことは気にしないぞ。第一、名前は太ってなどいない」
「いや、ほんと最近太ってひゃあっ」
「細いではないか」

お腹から腰をさわさわと撫でる手に声を上げれば、張遼はにやりと笑みを浮かべる。

「むりむりっやっぱり無理ー!」

更に顔を近づけてきた張遼にそう訴えばたばたと足を動かせば、テーブルの上に置いてあったカップがころんと音をたてて落ちた。茶色い液体がじわりとフローリングに広がっていく。

「ちょ、張遼、」
「文遠だ」
「…ぶ、文遠、ココアが、」
「そんなものは後でいい」

間近に迫る張遼の表情は真剣で、本気であることを悟る。首筋に触れる熱にくらり、眩暈がした。何も気にせず私に身を委ねれば良い。耳元で低くそう囁かれぴくんと肩が跳ねる。

「耳が弱いのだな」
「ひっ 耳元で、喋んないで…」
「ほう…なかなかいい反応をする」

楽しそうに耳元でくつくつと笑う張遼に身を捩りながらきゅっと目を閉じた。頬を優しく撫でる手はごつごつとしているけどひどく優しくて、大切に思われてるんだとすごく感じる。最近お腹が出てるとかココアのことなんて気にする余裕もなくて、もう覚悟を決めるしかないんだと次に来るであろう手の平の感触をじっと待つことにした。

きみだけ二本足なんてずるいや
110508 アンケートより
いいわけねえだろ!ココア舐めんなよ!…と、しいこは書きながら思いました。どうでもいいけどココアがのみたいです。
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