親愛なるのんへ
Happy Birthday!


「ふざけるな」

平々凡々な私ではとても想像できないくらい、しかし恐ろしく高いであろうことはわかる黒光りした車でやってきた曹丕は、来て早々に私の読んでいた雑誌を奪い取るや否や容赦なく頭をぶっ叩いてきた。それが今日誕生日を迎えた私にすることだろうか。なんとひどい仕打ちだろう。

「今ので私の貴重な脳細胞が死滅しました」
「ほう、馬鹿にも脳細胞があるとは初めて知った」
「(このやろう)…曹丕でも知らないことあるんだね」
「いくら私でも馬鹿の考えていることなどわかるまい」
「私も曹丕の考えてることわかんないよ」
「当たり前だ。貴様のような凡愚に私の考えていることがわかる道理などない」

誕生日だろうとなんだろうと、相変わらず曹丕は曹丕であった。この男は端正な顔立ちで口角を上げ、人を人とは思っていない言葉をぽんぽんと投げつけてくるのだ。こいつのおかげで私は本当に強くなったと思う、勿論いい意味で。

「飼い犬は飼い主に似るとはよく言うが、エアコンも似るのだな」
「ははっまるで私が壊れてるみたいな言い草だね。面白いなあ曹丕は」
「違うのか」

普段は憎たらしい不敵な笑みを浮かべているのにこういうときだけ真顔で言うものだから、暑さで苛々していたことも相俟って元々あまり高いとは言えない沸点は頂点にまで達しようかというところであった。こうなったら思いっきり怒ってやろうかとそこまで考えて、ここで怒っても余計暑くなるだけだろうと思いやめることにした私偉い。

「うあー…暑い暑い、なにこの暑さ頭沸騰しちゃうよ」
「案ずることはない。ののめの頭はとうに沸いている」
「そっかそっか。じゃあちょっと頭沸いてるののめちゃんの為にコンビニ行ってアイス買ってきてよ。ハーゲンね」
「馬鹿も休み休み言え」
「休み休みなら言ってもいいの」

ハァと思い切り深いため息を吐いた曹丕は億劫そうに立ち上がり部屋を出ていってしまった。もしや本当に買ってきてくれるのだろうか。そうだ、あんな車があるのだからコンビニだってちょちょいのちょいじゃあないか。そういえば前に曹丕の車に乗ったけど、あれはとんでもないカーサバイバルであった。「私はゴールド免許だぞ」これは名言である。こんなやつを野放しにするこの国の行く末が激しく不安だ。これがあの大手金融会社の次期社長だなんて世の中間違っている。あのカーサバイバルをまざまざと思い出し身震いしていると、カタンと物音がした。帰ってきたのか、随分と早いなと思った瞬間ドアを開いて現れた曹丕の手には、コンビニの袋ではなく白い箱が握られていた。あれ?と思ったらずいと差し出されおずおずと受け取る。

「…これって?」
「甄がお前に渡してくれと煩いものでな」

テーブルに置いてそっと箱を開けると、HappyBirthdayの文字が飛び込んできた。色とりどりの果物が綺麗に並んでいる、おっきいワンホールのケーキであった。目をまんまるにして驚いている私を見て、曹丕は愉快げに喉の奥でくつくつと笑っている。普段ならそれは不愉快に感じるのだけど、今はそれどころではなかった。

「…曹丕が作ったの?」
「貴様は馬鹿か。甄に渡せと言われたと先程言ったのが聞こえなかったのか?」
「でも、この字って曹丕の字だよね」
「、字だけだ」

ふんと鼻を鳴らした曹丕に思わず笑みが零れた。ずっと車に置いてあったのに溶けてないのは保冷剤が入っていたからで、さすがは甄姫さんだと関心してしまった。

「ありがと曹丕。甄姫さんにも伝えといて」
「何故私が伝えねばならん。貴様が直接伝えるがいい」
「えっ」

それはつまり、遊びに行ってもいいってことだよね。ぱあっと表情を輝かせた私は、しかし曹丕のならば今から行くぞという言葉によりみるみる青ざめていった。

「…曹丕の車で行くの?むりむり、死ぬ。誕生日が命日になるよ、ケーキもご臨終しちゃうよ」
「ふ、ならば安全運転で行こう」

なにが安全運転だばかやろう。この間も安全運転って言って飛ばしてただろうがと颯爽と立ち去る背中に思わずケーキを投げつけてやろうかと思ったが、チョコレートで書かれた文字が見えて今回だけは許してやろうなんて思った。

立ち去る背中をにらんだわたしはしかしチョコレイトで書かれたそのなんの変哲もない文字がたまらなく特別でいとおしいとおもったのです
110521
1日遅れですみません…!改めましてお誕生日おめでとうございます!のんが生まれてきた5月20日を心からいとおしく思います。こんな粗末なものでごめんなさい!これからののんにも、いいこといっぱいありますように!
曹丕が好きってことで曹丕にしたのですが、なんだかこれ偽物ですね。曹丕に罵られたい私の妄想がぐぐっと詰まってしまいました。誕生日祝いなのに…これっていいのか…でものんへの愛はたくさん詰め込みましたから!ケーキに文字書く曹丕って私的に可愛いとおもいます、苦戦してたらなお良い。「くっ 何故私の言うことをきかん…」そしてよく考えたら拙宅初の曹丕だった件。あれ、すきなんだけどなあ…
救いようのない阿呆なしいこだけど、どうかこれからもよろしくしてやってください!のん大好きだよちゅっちゅー!
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