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「お、つぐみじゃねえか!」
「…ああ、元親」

何だよ元気ねえなと快活に笑うこの男には悩みがあるのだろうかと一度真剣に考えてみたい。

「なんかあったのかい」
「いやぁ、ちょっとバイトで、ね…」

失敗してしまいまして。はははと苦笑いで告げれば、元親はへえなんて返してきた。こ、こいつ…そっちから聞いといてその抜けた返事はなんだ…!
元親はうーんと暫く考える素振りを見せてから、何を思いついたのかいい笑顔で伏せていた顔を上げた。果てしなくいい予感がしない。

「…よし!飯食いにいこうぜ!」

何故そうなると問う前にぐいっと腕を引かれたものだから、文句を言おうとした口からは変わりにうわっと小さく声がもれるだけだった。

連れられたのはすぐ近くにあるファミレスだった。ファミレスかよ、いやまぁファーストフードよりかはいいけど。
店員さんの案内で席についてメニューに食いつき、ここはあれが美味いこれが美味いと言ってくる元親に食欲ないからサラダでいいと告げれば、ダイエットかい?なんて言ってきたものだから、メニューで頭をぶっ叩いてやった。

「なんだよ、冗談だろ?」
「言って良いことと悪いことがあるんだぞ」

乙女に対して言うことではないと思う。別にダイエットじゃない。気が乗らないだけであって。

「元親ってさ、」
「おう」
「悩んだことあんの?」

きょとんとした元親は次の瞬間盛大に吹き出して、そりゃあなあ!なんて笑った。あまりにも笑うものだから不機嫌な表情をつくると、目に涙を溜めながらわりぃなんて謝ってきた。まるで説得力が皆無だ。

「元親でも悩みあるんだね」
「そりゃああるだろ。誰だってな」

そんなときは海にいくといいんだぜ。なんて言ってきたものだからそんな暇ないと間髪入れず返した。

「何も考えずに海眺めてりゃ、嫌なことも忘れられる」
「…あー、そういやそんなことテレビでやってたなあ」

ぼんやりと最近見た朧気な記憶を掘り起こす。寄せてはかえす波を無心で眺めていれば脳にうんちゃらかんちゃらとかいうやつだ。

「なんなら連れてってやるよ」
「…はは、元親って本当海好きだよね」

なんだか可笑しくなってくすくす笑えば、やっと笑ったななんて嬉しそうに言ってくるものだから、私はすっかり元親のペースに乗せられていることに気づいた。
それにしても、ほんの数分前までひどく気分が沈んでいたのに、もみくちゃされてるうちに食欲さえ湧いてくるのだから、人間の身体は無責任にできているものだ。

「なんでだろ。元親の笑顔見てると、疲れとか全部吹き飛んじゃった」
「そりゃあよかったな」
「なんか、元親が海みたいだね」

何故だろう、元親といると、お腹のあたりがほわほわと暖かくなる。ひどく居心地がいい。

「なんか食欲わいてきたかも。今ならご飯三杯はいける」
「太るぞ」

本当に失礼なやつだと溜め息を吐いたけど、幸せが逃げたような気はしなかった。元親が嬉しそうに笑っているからかもしれない。
気を取り直して、美味しそうな料理が並ぶメニューとにらめっこする。このほわほわした気持ちが何かはわからないけど、今大事なのはお腹がすいているということなのだ。お腹の中はほわほわしたって空腹は満たされないのだ。

あえて何もいわないけれど、抱きしめたらわかるのかなあ

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つぐみんへ愛を込めて!
誕生日おめでとうございます!こんな粗末なもので申し訳ないです…が、愛はこれでもかっていうほど込めたので!
なんか後半のおんなのこが色気より食い気みたいな感じになってしまった…元親といたら悩みとか吹き飛んじゃいそうだよね!今年は進路とか忙しいと思いますが、しいこはずっとつぐみんのこと応援してます!これからもよろしくしてやってください…!18歳のつぐみんにもいいことたくさんありますように!しいこでした。
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