短編集/男主 | ナノ


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皮肉なことに、その事実が明るみになったのは彼が入学して一年後。一人の特例中の特例である少女が不思議な猫と共に入学してきた。最初は可愛らしい子だね!と笑っていた彼も、彼女が(というかその相棒が)起こす騒ぎにはひくりと頬を引きつらせ「すごいね…」という評価を落とす。


そして、その日は、あっという間に訪れた


―――ハーツラビュル寮長 リドル・ローズハートがオーバーブロットを起こした日。彼の本質が白日の下に晒された。


暴走するリドル・ローズハートの現場にたまたまリドル本人に用事があって居合わせたレイに、彼らは希望を見出した。リドルの友人である彼なら、この状況をどうにかできるのではないのか、と。元より有名人でもあり、教師の覚えもめでたい彼のことをクロウリーも把握していたし、援助を望んだところ、彼はいつものように人の好い笑顔で承諾すると加戦した。

そこからはあっという間にハーツラビュルの問題は解決した。

ハーツラビュルの問題“は”である。意識が戻ったリドルがまず最初に行ったのは友人であるレイへの謝罪。けれど彼はそれをいつもの暖かな笑顔でなく、すべての感情をそぎ落としたような声で突き放す




「すまない、レイ。君は迷惑をーー」
「美しくない」
「え…」
「オーバーブロット?君の心がそんなに弱くて美しくないなんて、知りたくなかったよローズハート君。俺は美しい人間は好きだ、でも、身も心も美しくない人間は俺の周りに一人で十分。ごめん、ローズハート君、君との友人関係はここで終わりだ」




パッといつものような笑顔に戻って彼は去っていった。何を言われたのか理解していなリドルと、呆然とするハーツラビュル生を残して。

そこからはまるで崩れるように簡単だった。




レオナ・キングスカラーがオーバーブロットを起こした。彼はまたもにっこり笑って言った





「オーバーブロットするほど、心の弱い人間は一人で十分なんです。さようならレオナ先輩」




アズール・アーシェングロットの暴走時も、彼は無情にも吐き捨てた




「君は違うと思ってたけど、彼らと同じなんだね。努力する自分を否定して、耐えきれず暴走して、さようならアズール・アーシェングロット。俺の世界に、君もいらない」




どうして、なぜ、どうして、切り捨てられた者たちは失意のままそう繰り返した。

次にオーバーブロットを起こしたのは彼の寮の副寮長だった。居合わせたアズールたちは彼はきっとジャミル・バイパーを切り捨てる。そう確信した。けれど彼はいつものように笑みを浮かべて、元に戻った彼を抱きしめる




「ああよかった。大丈夫?けがはない?」




そう言った。今までとは違う反応に、どうして…と、監督生がつぶやいた。操られてる…?とフロイドが言葉を零すが、レイにその兆候は見えない。




「もしかして、レイ先輩が言っていた、身も心も美しくない人間って、ジャミル先輩のこと…?」




ニコニコとほほ笑む彼をみつめ、そういった監督生に、アズールが唇をかみしめながら言う




「許しませんよ。そんなこと。」




今まで我慢していたものがあふれ出してしまいそうだった。
そして、この情報は各寮長の間を駆け巡り、ほの暗い感情の浮かんだ寮長たちが彼を捕まえようと手を伸ばすまで、あと数日。



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