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かつて、「帝王」と呼ばれる者がいた。
かの物はかの「皇帝」にさえ、膝をつかせ絶対的王者として君臨する、はずだった。
しかし、いつの間にか彼は消息すらも絶ち、学院は「帝王」の慈悲により【引き分け】となった「皇帝」が収める。
彼の容姿は美しく、どこか情時めいた色気を持つものだったと伝えられる。しかし、性格だけはその者を知るものは全員口を噛んでしまった
それにより彼の性格は様々な憶測を生む。
性格も完璧だったとか、性格は最悪だったとか。
けれどもまだ正解は出ていなかった。
入学時より彼と共に学んできた朔間零は目に入れても痛くはない!と豪語する弟に聞かれても笑ってその場を濁すだけ。
留年を経験し四年目になる前、朔間零は彼を知る人物を集め一様に彼の性格のみを口外してはいけないと伝えた
「良いな。この事に関してだけは敵も味方もない。夢ある者たちの理想を壊すな」
ーーそれがいつか壊れる夢であったとしても
「あの「帝王」が頭の中ゆるふわでただのアホって事は確かに伝えちゃいけねぇよな」
頷く鬼龍
「まあ、いっしょにぷかぷかしてくれるのでわるいひとではないんですよね〜」
笑顔を浮かべて微笑む深海
「僕は彼の性格好きだけどネ」
笑う夏目
「まあ!我らが「帝王」はそんな所も魅力的ですがね!」
高らかに宣言する日々樹
「イヤ。アレは嫌味なほど頭の出来は良かったのだよ。考え方と思考回路がアホなだけでな」
マドモアゼルを見つめながらつぶやく斎宮
「君達はまだ良いよね。僕は覚悟を決めて決闘を申し込んだのに当の「帝王」はアレで、そのくせ歌もダンスもパフォーマンスも完璧。この僕を負かしたのに結局は「納得できない理由」で引き分けに」
肩をすくめるのは天祥院。
ここにはいない月永レオには予め連絡が行っているだろう
そう、彼らの前の三年生が必死になって隠そうとした「帝王」の性格はきっちりとこの場に居る全員が理解していた
各自様々なトラブルにより見てしまった悲劇。
そのことだけは留年した朔間零は本当に申し訳なく思っているのである
コレは彼が学院を去って一ヶ月後の話
そして彼が帰ってくる一年前の話
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