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宝石、金貨、風景、花、生き物。この世には多くの「美しいもの」が存在する。それは時に、人を、国を、世界をも狂わせるであろう。知識のある生き物は常にソレを求めては争いを繰り広げるのだから。
それを長く見つめ。彼はニンマリと笑みを浮かべた
美しいものは好きだ、そこにあるだけで価値がある
醜いものは嫌いだ。まるで自分すら穢されるように感じる。
野に咲く花を眺め、彼は立ち上がった。太陽の光を受けて上を覆う緑林が透けて美しい。
美しいものを愛そう。醜いものなど目にいれぬ。それは人の本能だと、彼が笑って歩き出す。そして告げた。こちらに手を伸ばす誰かを乱暴に叩き落して告げた
「さようなら醜い人。もう二度と俺の前には表れないでね」
極上ともいえる微笑みを残し、彼はその場を後にした。
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