短編集/男主 | ナノ


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「どうして逃げるんだ?」


不思議そうに瞬く赫灼と呼ばれる瞳が俺をじっと見つめる。その瞳にちらつくのはよくわからない色をした炎のようなもので、壁際に追い込まれ、腰を捕まえられた俺は「ひぅ」っと情けない声しか上げることが出来なかった。とろりと溶けるような甘やかな瞳が俺を映しこんで、余った方の手で頬を撫でられる。


「俺はこんなにも君を求めて探していたのに、君は、人じゃないのか…」


たしかに、人の指をすり抜けてひらりひらりと舞う姿は蝶のようだもんな、だけど今は俺が捕まえてるけれど。にっこりとして微笑む男に恐怖しか浮かばず、目じりにたまった涙を吸われた。びくりと震える肩を愛おしそうに撫で、肩を食まれる。拝啓前世と今世の母様、父様。俺は今、男に襲われております、助けてっ。こんな薄暗い裏道なぞ誰も来ないだろうけれど、信じたくもない神や仏に祈る。ああ、どうしてこんなことになったのか、俺は俺の仕事をしていただけなのにっ






バタフライエフェクトというのは御存じだろうか、簡単に説明すると蝶が羽ばたき風ができた、その風が竜巻になりましたという普通ならあり得ないカオス現象のことを差す。

つまり、誰かが言った何気ない言葉が思った以上にその人の心には大きく刺さり、未来を捻じ曲げてしまうというような現象だ。この現象を夢小説等ではオリ主が放ち、その言葉をきっかけにキャラが生き延びましたという感じに使われる。


さて、そんな俺は一種の妖精さんだと考えてもらいたい。妖精の割には可愛くないという批判が聞こえてきそうなものだが安心してほしい、俺は可愛い(断言)なんせ金髪紫眼のショタである。妖精さんエフェクトすらついてキラキラ輝いているこの俺を誰が可愛くないなぞといえるだろうか。

つまり、俺はバタフライエフェクトもといバタフライ現象が擬人化した姿である。こんな概念を生み出したのが父親で妄想で膨らませた夢もつ少女たち(たまに男)が母であると言えるだろう。そんな俺のお仕事は何気ない言葉にキラキラとしたラメを張り、その言葉の存在意義を大きくすることである。その何気ない言葉のおかげで生き残ったキャラは多い。…と思う。例えば宍戸色の髪の少年にはそれはそれは可愛らしい幼馴染が居たため、「生きて、帰ってきてね」という別れ際の言葉に息を吹きかけることでエフェクトを掛けたし、蝶の髪飾りをつける美女には道行く男性の「あっちの方に迷子がいるってよ」という言葉にエフェクトをかけて歩みの先に居るやべぇ鬼から逃がし、傷だらけの青年とその横に立つ顔立ちの優しそうな青年が今からちょっとだけ厄介な鬼を倒しに行くと聞いたので、そこら辺に居たなんか強そうな刀持ったお兄さんにエフェクトを掛ければ同行して倒しに行った。三人とも無事に帰ってきたのでほっと息をついたものだ。

ところで、俺の姿は基本的に人に見える。

現象といえども擬人化した姿なので。勿論現象という概念を持つ俺は透明化することだって御茶の子さいさいだ。まあ、臭いとか立てる音とかはあるんだけど、そんなのよほど感覚の優れている人物にしかわからない。そもそもそんな人間がこの世にホイホイいるわけないのだ。

駅弁を食べながらただひたすらに口を動かし、前方に座る男を見る。たまに降ってくる天からの指令書(多分お母さん)に目の前の男を生かす様に書いてあった。え、でもお母さま(仮)あの人殺しても死ななさそうな見た目してますけど、何にエフェクトかけるんですか。かわいらしい幼馴染も懇意にしてる団子屋の娘も全員が全員彼に(恋愛的)好意持ってないし、なんならそれぞれにすでにお相手がいるんですけど。(無表情の男といつぞやかの宍戸色した髪の男)


そしてなんかぞろぞろと同じ服に色の違う羽織をした少年たちが目の前の男の横や前に座る。



――――いまよ!エフェクトぉおおおお!!



なるほど、今回のお母さま(仮)は腐った方でしたか。OK。把握。


継子にしてやろうというワードと面倒を見てやるというワードにエフェクト(息)を吹きかける。まあ、死ぬときは死ぬと思うのだが…。なぜか、ターゲットの男の前に座る、額に火傷を負った少年と目が合った気がした。



―――結果的になぜか腹に穴をあけたというのに男が助かった。


この世界の人間、生存率高すぎてわけわからんのですけど。何がおきたのかわからずに、倒れた車両の上から見下ろす。頭の中で響くファンファーレはきっとお母さまの心情に違いない。はっちゃけすぎてちょっと怖いけど、たぶん今日も元気に布団の上で魚みたいに跳ねてるんだろう。


仕事が終わったので姿を消し、宙へと浮く。俺一応バタフライ(蝶)なので。飛べます。何なら成人男性二人まで抱えられるよ俺。



そうしてまた各地をふらふらし続け、いろんなところにエフェクトをかけまくり、たまに飛んでくるお母さまの指令をこなし、………俺のお母さま何人いるんだろうな??

次に足を踏み入れたのは遊郭だった。

綺麗なお姉ちゃんがいっぱいいるところである。よき香に誘われてふらふらとしていればなんか暴れてる大層別嬪な角生えた女の子が、どこかで見覚えのある男の子に拘束されている。




「ねえ、なにしてんの?」
「えっ!?」




思わず声を掛ければなんでここに人がいるんだと言わんばかりのそれに眉を顰め、それ、どうにかしたら、なんか声かけなよと促す。




「で、でもっ!」
「さっき忍の恰好した人がなんか言ってたでしょ。もうそれでいいよ。俺が手伝っちゃうから」
「〜〜〜っ」




何かを考え、口を開く少年の言葉を待つ

そして



こんこんおやまのこうさぎは なぁぜにおみみがなごうござる




その歌に手を皿状にしてふぅっと息を掛ければエフェクトとなり蝶が舞う。それが数度俺の周りを踊って戯れると鬼の少女の中に入っていった。途端、暴れていた少女が泣きだして小さくなると、すやすや寝入る。

ほっと肩を降ろす少年を見下ろして、俺はそのまま歩き出した。正直お母さまが何をしたかったのかはわからないけれども、これでいいんだろう、多分


そう、すべての始まりはここである。


それからというもの俺はあの少年に追いかけられまくった。どうやら酷く鼻が良いらしく、あっちへ逃げてもこっちへ逃げてもなぜかばったりと会合し、追いかけられる。そのたびに叫びながら逃げるのだが、今回は違った。いきなり路地裏へと連れてこられ、腕に囲われたのだ。え、怖い。


そのまま尋問のような質問攻めを経て冒頭に戻る





「やっぱり、可愛いなぁ」
「あ、あの、俺…」
「汽車の中で目が合った時から気になってたんだ、だから、…俺と共に来てくれないか?」




ぎゅぅっと手をつなぎ、にっこりとほほ笑んで彼が言う。その言葉には有無を言わせる必要はなく、意地でも、強引にでも連れて行くという気概が感じられ、俺は涙目のまま頷いたのだった。







数百年後、いろいろと経て、人間へと生まれた俺がまたこの少年に見つかり、今度は処女を散らすことになるのはまた別の話




















主人公


バタフライエフェクト(現象擬人化)した主人公。人に見えたり見えなかったりする金髪紫眼の生意気ショタ(見た目)。めちゃくちゃ美少年。いろいろあって炭治郎君にロックオンされた。大正では閨に連れ込まれても持ち前の顔と、ちょっとおびえるだけで解放されて処女までは奪われてなかったよ。来世(現代)では出会った瞬間に捕まえられて選挙権と共に処女を散らす。ちなみに味見はしっかりとされた模様



炭治郎


第一印象からきめてました!まさか大正で逃げられるとは思わなくって、出会った瞬間に捕まえ味見をした後に選挙権到達と共にぺろりした。愛が重い。自重しない。ちなみに手加減無し。




っていうネタの提供ですね。べつにエフェクト()じゃなくてもいいけど綺麗なショタがふぅってして蝶々🦋出すところを見たかった。現代では多分胡蝶家の親戚。


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