短編集/男主 | ナノ


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「俺こそが長義が打った「いま、そんなことはどうでもいいんだ。出陣に、行ってくれ。」




コレは、…これは…。名乗りを上げる暇もなく命令するとは馬鹿かな??頭緩いのかな?彼は審神者のはずなのだけれど、と、本霊から事前に与えられたブラック本丸という先入観と途中で破棄された契約に呆然としながら男を結構厳しく、批判するような目で見るがすでに興味もないと言わんばかりに背を向けている。『今、後ろからバッサリやれれば…』一瞬にして横切った邪な考えを振り切り、俺はあくまで笑顔を見せた




「ああ、わかった」




あ、ごっめん本霊、しゃべってた。
なるべく無口なキャラで通すことにするね。あと、何気に口上を述べれそうだったことを褒めてほしい。多分今後ないから。
方にかかる布を翻しながら本丸の廊下を歩く。庭は荒れ果て、池の鯉が腹を出して浮かんでいる。雨すら降っていないもののどす黒い雲がお天道様を遮って光柱すら本丸には刺さっていなかった。コレは、山姥切長義の記憶をたどる限り、普通にブラック本丸のような気がする。本丸に影響を及ぼすことが出来るのは実質審神者だけと聞いている。またはその空間を貸した出した下位の神が審神者を見捨てた場合もこうなると、コレはどちらだろう。

庭は神の行い、空は審神者の心。本丸は今の彼らの現状。

この分だと貸し出した下位の神は審神者を見捨てたのだろう。人という短い生をこの空間で生きることを許し、自分は審神者が死ぬまで短い旅に出たと考えるべきなのかもしれない。

面白みのない景色を見つめ歩ていれば動く者の気配を感じて立ち止まる

低く低く低く、何かがうめくような声、その声がするのは紛れもなく、この襖の向こうから。手入れ部屋と書かれたそれは一見して稼働しているように見える。現に『利用中』という掲示板の文字が躍るのだから。




―――ブラック本丸(仮)のくせに手入れはされているのか




純粋にそう思った。

あの審神者を見るぎり、決して色狂いではないだろう。色狂いなればこの俺の美しさに何もしないなんて言う選択肢は生まれないはずだ。どこぞの天下五剣のように完成された美ではなかったとしても、俺も十分に人を狂わせる容姿だと自覚している。




「ねえ、アンタ怪我したの?生憎今は使用中…って、だれ?」
「…」




やめてよ、俺人見知りなのに、なんでこう、ポンポンと鉢合わせしちゃうのかな?
少し困ったように笑いつつ、トントンとのどを指させば、すごく気まずげに目の前の男士は目をそらしながら「今、瘴気酷いからね。主も悪い人じゃないんだけど、というか被害者なんだけど、この本丸ブラックっちゃあ、ブラックだから…」そう言った彼はにっこりと笑い、俺に向けて口を開く




「俺、加州清光。一応この『貴梅本丸』の初期刀。何かあったら俺に言ってほしいな」




なんで自己紹介するの。俺、自己紹介されても答え返せないよ、人見知りを舐めないでほしい。脳内の幼女が「ふええええ(´;ω;`)」してるから。カチンと綺麗に固まった俺に加州が不思議そうにしながらこちらを覗き込む




「うっわ、美人」
「………」




当たり前だろうと少しだけ思ってしまった、ごめんね。俺が美しくて。意外と俺は余裕かもしれない。

俺が美しいのは当たり前だからいいとして、とりあえず俺は出陣しなきゃいけないらしい。
それが分かったのは大広間に案内された瞬間にその日の当番の掛けあるらしい札が動き出して、出陣の欄に俺の名前がしめされた

厚樫山

第一部隊
隊長 山姥切長義

加州清光
大和守安定
岩融
太郎太刀
次郎太刀


ちなみに山姥切長義の横にお守り・極が出現したのを見て加州が当たり前のように俺の服に付けた




「隊長だから折れないと思うけど、もしものためにね。あと、この本丸では一部隊と二部隊、今後紹介する刀以外信用しないほうがいいよ。主も、そいつらのせいでこの本丸もこうなっちゃてるんだからさ。」




その説明は後々するよ。あんたは主が作り出した刀だから。











その口ぶりからしてまるであの審神者がブラックではなく、何か事情があるみたいで、俺はただ神妙に頷くだけにとどめた。



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