短編集/男主 | ナノ


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人見知りという言葉をご存じだろうか。従来は子供が知らない人を見て、恥ずかしがったり嫌ったりすることである。大人の場合は「内気」・「照れ屋」・「はにかみ屋」・「恥ずかしがり屋」の言葉をあてるのが標準的である…らしい。Wikip〇dia先生が言っていたのでまず間違いはないと思う。

さて、俺の話をしよう。

俺は生まれた時から素晴らしく優秀だった。他の子供より早く物を覚え、他の子供よりも早く寝返りを打ち、他の子供よりも早く言葉を放った。それに加え成長していくたびにあらわになる俺の美貌。まさに才色兼備という言葉がふさわしい子供だったといえる。周りは俺を持ち上げた「天才だ」「これぞまさしく神の作り出した云々」「将来が楽しみだ」等。俺を褒めたたえた言葉はすでに三桁を超えているだろう。ありきたりな賛辞から雅な喝采まで送られた俺は小学校低学年までぶっちゃけ生意気なクソガキだった。そうだろうそうだろう、俺は美しいだろう、俺は天才だろうと賛辞も喝采も当たり前だろうと鼻で笑う。我ながら面倒なクソガキだったに違いない。

そうして小学校低学年の間は見事なまでに天狗だった俺だが、小学四年生の時、とある言葉を聞き、その自信は見事に崩れ去った。

「十歳で神童、十五歳で才子、二十歳過ぎればただの人」

なんのきっかけでその言葉を知ったのかはわからなかったけれど、その言葉を聞き、理解したときの衝撃はすさまじかった、今はいくら神童ともてはやされようとこの日本というごく狭い社会の中に置いて、俺の能力は本当に秀でているのかと、ただ単に他の人間よりも成長が速いだけなのではないかと。考えれば考えるほどその深みという名の泥沼にはまり、俺は自信を失った。

徐々に自信を無くし、人の目を避けるようになった俺を親族や周りの人は心配し、何度も声をかけてくれたが、もはや天狗時代の俺は黒歴史、彼らが心配に心配を重ねるたびに俺は殻に閉じこもり、最終的には引きこもりとなってしまったのである。かなり虐めを疑われたがそんな事実は一切ないことをここにしめしたいと思う。誰も悪くない

小学生中学年から卒業までの間、家に引きこもったのではないだろうか、気づけば中学生になっていた俺は親に勧められた通信教育とやらを受けて中学を受験しどこかの私立中学校への入学となる。主席だったとのことで式辞を読むよう依頼があった時、また新たな問題に直面した、そう、三年間親や弟としか交流していないせいで極度の人見知りになっていた!

式辞にすら立てないダメな人間は俺です

完全に自信を無くした俺はある程度制服を着崩してもいい学校だったことを幸いにパーカーで顔を隠して通学した。ちなみに寮制だったので同室の男子生徒に慣れるのにも数か月を要し、慣れたら慣れたでその顔を晒すんじゃねえにゃと怒鳴られ、室内でもパーカーのフードを被ることになったのだ。禿てしまう…、という心配は他所に俺の髪は大学卒業するまでとてもキューティクルだった。さすがに女の子には負けると思う


中学、高校、大学とエスカレーター式に上っていき、…最後まで一位という成績を崩すことなく、俺は社会人と…なりたかった。

そう、社会人になるべく受けなければならないもの、面接で躓いたのだ。

〜〜目と目を見ておしゃべりできない系男子〜〜


書類審査ではすぐに二次試験に行けるのに、二次試験で合格した後の面接で躓いてダメになる。最終的に「あっ。あ」としか言えなくなる。そうなると担当の方は酷く残念そうな顔をして不採用の通知を受け取るまでがワンセット。その回数が二桁を超えたあたりで親は俺に社会に入ることをあきらめ、まるでいままで構えなかったと言わんばかりに俺を猫かわいがりし始めた。今思えば両親は酷く俺に甘かった気がする、多分顔のせい。まあこの顔だけは自信もって俺は誰よりもきれいだとはいえるのだ。そんな俺を見て弟はどこかうっとりしながら「ああ、兄さんはきれいだからな」というのだ。正直に言ってめっちゃこわい。ちなみに弟は腹違いの弟らしい。父親がどこかの情婦に孕ませたと聞いたときは家族への裏切りかと思ったものだが、その時代の俺はイキってるだけでなく、身体も弱かったため、しょうがないのかもしれない。母が黙認していたのはその当時の俺には理解できなかったため、ひどく弟にはつらく当たったものだ、それでも弟は「兄さん兄さん」と近寄ってきては「兄さんのおかげで俺は生まれたのだから、実質俺の母親は兄さんなのでは」と真顔で言っていた。怖い。あいつは何なんだろうか。
そんな感じで日々を過ごしていた俺は自宅でもできるプログラミングの仕事について日々を謳歌していた。プログラミングだけは人と接しなくてもいいためか面接官も残念な顔はしなかった。そんな生活を謳歌して三年。自宅で自宅警備員として生活しつつ、プログラミングの仕事のしていた時のことだ、母に買い物をするように頼まれた俺はメモ帳とお金をもって出かけた。異様に引き留めたがる弟を無視して出かけた瞬間俺は殺された。何を言ってるか分からないとは思うけれど俺もわかってないんだよね。ただ、「貴方を殺して私も死ぬ!」的なことを言われた。嘘だろお前、だれやねん。最後に見たのは絶望したように顔を隠した弟だった。どうでもいいけどお前、俺の葬式ぐらいそのうっとおしい布をとってくれよ。


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