短編集/男主 | ナノ


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「天寿は全うした。行くぞ猫丸!マル!」
「すごいなこの人、死ぬまで慎ましやかだったはずなのに死んだ瞬間、いろいろはっちゃけてる」
「にゃ…」




もう恨みとかないんじゃないのか。というか59まで生きたのってこの時代だとすごい…。もともと霊力の強い人だったし死んだあとこうなることはある意味必然…、あれ。道真公もしかして大宰府の道真公…、京都悪夢に陥れる人では…???教科書で見たことある。

さらっと生前の恨みを晴らすと宣言し、悪霊に転じた道真公と、京に行く道で仲良くなった妖たちを引き連れて京の町を訪れれば天地異変、ここぞ地獄といわんばかりの光景が広がる。何がすごいって民間にあんまり被害がない。何人かの祈祷師が怒りを鎮めようと念仏を唱えてるけど、今道真公ハイテンション×二乗だから多分それBGMにしか唱えられてない。そういえば生前やっていたゲームで三条が全員揃うと三の三乗で惨状になると聞いたことがあった気がする。

あ、祈祷師の声に泣きが入ってきた。




しょうがないかぁ、と




…数年間くらいそれを眺めてから私は重い腰を上げると道真公が私を打った刀匠の父様に依頼して作らせた脇差:猫丸(二号)を手に当時の天皇である朱雀天皇の夢へと入った。入ったのだが…




「かちゃなーー!」
「………まってぼくなんさい??」




どう見ても幼児ですありがとうございます。ごめん待ってね。今、道真公「次の天皇もコロコロしてやんぜー!(意訳)」張りに張り切って…。止めなきゃあかん。子供の魂七つまでは神の子。つまりこの子は今現在神の子だ。しかも天皇。これをコロコロすると道真公は天井の尊い方々にコロコロされてしまう。

だけれど何も得ずに怒りを鎮めるのも収まりがいかない




「ねえ、ぼく?」
「あい」
「今からね、刀を渡します。猫丸っていうの」
「にゃんにゃん!」
「そう。この刀をあなたのところの偉い人、そうね、あなたのお母様に渡してくれるかな?」




できる?そう聞くと次天皇であるその子は元気よく返事をした。























次に私が行ったのは摂関である藤原忠平の元。この男は道真公を陥れたうちの一人である。

少々威厳をもって夢へと入れば悪夢に追い回されていたため、話をするためにその悪霊どもを切り捨てる




「もし、そこの方」
「――あ、あなた…」
「我が名は猫丸。あなたが貶めた道真公の太刀。猫又を切り捨てたことからこの名がついた。さて、あなたに話があるのですよ。忠平公」




にっこりとほほ笑めば腰が抜けたのか顔を青くして逃げようとする男の衣を踏みつける




「この災いを収める方法を教えてあげましょう。なぁに簡単なことです。一つ、我が主の罪を流し、崇め、称えること、二つ現在の天皇に渡した私の依り代を京の神社に奉納なさい。そうすれば祟りは収まるでしょう」




目じりに涙をにじませながらブリキの人形みたいに何度も首を縦に振る男を見下ろして笑みを浮かべ口元を袖で隠す




「もしも、約束がたがえた時、その時は再び祟りが起こると肝に銘じなさい。―――猫の恨みは怖いですよ?」




にゃあとどこかで猫が鳴いた







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