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ああ、忌々しい。
足元のマルがにゃあと悲しそうに鳴き声を上げる。
流罪。
ゆらゆらと揺れる船の上で私は海辺に集まる妖や霊を切り捨て、道真公を見る。
――まあ結局、一緒に朝廷することもなく、天皇転覆の容疑をかけられた、いや、他貴族にはめられた道真公は流罪として九州へと島流しされる。抵抗しても彼らは耳を貸さず、訴えても彼らは知らぬぜんを通した。
「−−−、社へ、行きましょう道真様」
「私は、私のしてきたことは…」
「道真様」
「猫丸…」
「今は一生懸命生き抜くのです。恨むのは死んでからでもよいでしょう。その時はこの猫丸、お供します」
「猫丸…っ」
にゃあっとマルも返事をするように鳴き、船を歩き回る。
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