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『この学院に王とつくものは四人も要らない』
かつて、この学院を制する前『皇帝』はそう言い放った。
『王様』と呼ばれた月永レオ
『皇帝』と言われた天祥院英智
『学院の帝王』と囁かれた斎宮宗
『夜の帝王』だと恐れられた暁結城
『皇帝』は『夜の帝王』こと暁結城に挑む前に二人の『王』を潰したが彼だけはその財力、才能、人脈を持ってしても倒せない。
地に伏して惨めにも断罪を下されるのはそれはまでその才能と人脈、財力を活かし勝ち上がってきた無敗の『皇帝』
ーーー負けると思わなかったわけではない。
けれども五奇人と『王様』を倒した彼は自分ならやれると天狗になっていたのも事実、そして、その差を見せつけられる
音響の妨害すらしたのに彼は圧倒的な技術でそれすらまるで予定に組み込まれているかのように振る舞い観客を自分の中へと引きずり込んだ
『ねぇ、俺のステージの邪魔までして勝てなかった感想は?』
舞台が終わって観客が去って、そのときに聞いてきた彼の表情は冷たく、まるで自分を人とすら認識していないように感じさせる
『無敗の皇帝だって聞いてたから期待すれば君たち全員ただの運が良かったアイドルだね?』
あくまで何事もないかのように、世間話をするかのような口調で
『あんまり、調子にのんなよ二年共』
最後にこちらが赦しを請いたくなる口調ではそう言って彼はこの勝負を引き分けにした
『勝負の勝ち負けは相手が全力を出すからこそ決まる。俺は出してないんだからこの勝負、無効だよね?感謝してよ『皇帝』、お前にまだ『無敗』の名を上げる』
その言葉を最後に帝王はさり、壊れたように青葉つむぎは崩れ落ちガタガタとその体を震わせた。
近くで成り行きを見ていた当時の五奇人である二年と一年は『帝王』の側で泣き止むまで側にいて零はコツンと結城と共に拳を合わせる
『敵は取ったよ』
『お疲れさん、あんがとな』
それ以上言葉は要らない。
『先輩、ありがと…っ!大好きだ…!』
『「かんしゃ」します…っ』
『無理。してないだろう、なっ』
『ごめんなさい…!ごめんなさい!』
泣き出す後輩にいつものよう笑って彼はその頭を撫でた
『いーよ、お前らは大事な後輩だから。俺が守ろう。その変わり、お前らはお前らの後輩をキチンと守れよ』
その言葉を最後に彼は翌日から海外へと渡っていった
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