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「…ドリフェスってなんだっけ」
その一言は一緒に食事をとっていた面子に打撃を与えた
そのなかで一人朔間零はあぁ、そういえば彼が留学した後にできた制度だったなと思い出す
「なんで急にその話を出したんです」
「なんか申し込まれた」
「「「…」」」
誰だ、誰が申し込んだ
走る緊張に爆弾を投下した彼はコテンと首をかしげている
「…あのな、結城、ドリフェスってのは…」
苦々しく口を開き説明した後、彼はケロリと何でもないように
「なんだ、そんなに難しいことじゃねぇのか」
そういってのけて見せる。その顔にゾクリとしたのは彼だけではない、いつもは笑みを浮かべる深海も目を見開いた。
妖艶に力強く自信に満ち溢れた笑み
『ふーん、『皇帝』って、こんなもんなんだね?』
残酷にも邪気のない笑顔でかの人にそう言い放った姿が思い出される
『『無敗』を誇るって聞いたけど、ただ運が良かった『アイドル』だよね』
その笑顔は彼からしたらどう映っただろうか
恐怖?畏怖?尊敬?信仰?絶対的な王者?
「肩慣らしにはちょうどいいかな」
その言葉通り彼はドリフェスを受け、そして勝った
圧倒的な、もはや蹂躙とすら呼べるその実力差
負けた生徒は何が起きたかすらもわからないように呆然と彼を見上げる
「お前、アイドルに向いてないな、やめたら?」
微笑む姿、おかしい、ドリフェスは一人で受け
勝てるほど甘いものだったか…?
無邪気な言葉は鋭利な刃物となり挑戦を叩き付けたアイドルたちの心を無慈悲に砕いた
―――帝王の帰還――――
この事件はそう学院に広まり絶対的な力を見せつけられた生徒は学院をさり
新たに彼に挑戦する者たちはことごとく散っていった
「…やっぱり、彼は一人で」
「会長?どうしたんです?」
「いや…、なんでもないよ」
いくら平素が、本性があれでも帝王は帝王だった
舞台の上で彼は性格が変わったように相手を蹂躙し見ている相手を引き付ける
「こんどこそ、勝つさ」
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