短編集/男主 | ナノ


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俺の名前はルイ・ファール。突然だけど俺の話を聞いてほしい。



俺は前世というものを覚えている。顔はいたって平凡などこにでもいそうな社会人。ある日自分の不注意で死んだと思ったらめっちゃ顔のいい子供になっていた。何処かで聞いたことある様な話である。そんな経験を持つキャラクターを俺は「なろう」というサイトで数百回は目にした。もちろん前世の話だ。


俺が思い出す前、俗にいう幼少期は比較的平和に過ごせていたと思うが気づけば周りは血みどろ修羅場。立てばメンヘラ座ればヤンデレ歩けば後ろにストーカー。俺は悟った。この人生ハードモードだなと


小さいころ限定で可愛いのなら良かったし話も変わっただろう。だが残念なことに俺の顔は成長すればするほどイケナイ夜の街で女に貢がれ誘われるホストみたいな外見になっていた。それに比例して俺の荒れに荒れた


たまたま目のあった女性、話しかけてきた少女、果てには教師までが自分を魅入らせ狂わせた責任取って一緒に死ね!!っていうクレイジーサイコパスみたいな女が増え俺の命を狩り取ろうと刃物片手に追い駆けてくるのだ。俺は泣いた。


前世で確かに次生まれるときはイケメンがイイなんて呟いたりもしたが冷静に考えろよ誰がこんな人生望む??望まないだろ。たった一言の言葉が俺の命に大きな影響を与えてくる。控えめに言っても地獄。お疲れさまでしたルイ君の来世にご期待くださいってか、やかましいわ。俺はただ平凡に暮らしたいだけだ。


そんな幼少期を過ごして前世で言う高校入試を考える時期になってきたころ俺の手元に二つの手紙が届いた。片やロイヤルソードアカデミー、片やナイトレイブンカレッジというどちらも名門中の名門で、俺は迷わずナイトレイブンカレッジに入学。理由は女の子が少なかったから。今までの経験上ヤバイ人間に早変わりするのは女が多かったから、俺は全寮制の男子校を選んだ。寮は美意識の高いポムフィオーレという場所でキラキラした男子生徒も多く、基本的には穏やかな場所だ。たまに手袋投げてる古臭い男もいるが、それはスルーで構わない。


もう、女の子に刃物向けられて泣くのは嫌だった。


だって鬼気迫って心中を迫る女の子は本当に怖いんだ。前世俺の中で根付いた可愛くて可憐な女の子は消え失せ、近所のおばちゃんや幼馴染以外は全員鬼女となる可能性を秘める。そういった感じで女の子から逃げるためにナイトレイブンカレッジに入った。それなのに彼女たちは俺を学校まで追って来ては侵入し俺に刃物を向ける。どうしろと??たまたま近くを通りかかってくれたリドル君やレオナ先輩が居なければ俺はこの世にいなかっただろう。俺は二人のことが大好きである。だって守ってくれるから。


守ってくれると言えばこの学園の生徒は俺に甘いと思う。多分俺があまりにも情けないからだがそれでもいい。ここは酷く居心地がいいし、何らずっと俺はここで過ごしたい。将来はこの学園の教員になることが夢だったりする。それにしても今日刃物で襲い掛かってきた彼女の顔は好みだった。


でも女というだけですでにマイナス。今後俺に近づかないで欲しい。いつまでたっても襲撃に慣れないなぁ、お前はと近くにいた友人に言われるが、どこの世の中に刃物持った人間に襲われることを慣れる人間がいるのか。いや、慣れたとしても俺のスペックじゃ避けることなんてできないからいつも涙を流してひぃひぃ言いながら生きてる。今日もリドル君が頼もしかった。




「ありがとう、リドル君…」
「友人を助けるのは当たり前だよ。」
「ついでにカリムも」
「おう!何かあったら言えよなルイ!」




たまに出る重すぎる実話がなければなあ。そっとため息を零してから俺は小難しい話をするトレイン先生へと目を向けた。









――――女の子が入学してきたらしい


その噂が学園内を一周して俺の元までたどり着いたときには入学式からすでに一週間が経過していてどこか決まりが悪そうに俺を見つめ、ポツポツと新入生のことを話すクラスメイトの顔色は悪く,その内容が真実なのだと突き付けられる。一瞬の静寂。誰もが俺を見つめ、あのリドルが覚悟を決めた顔をして口を開く




「おそらく、君が一番苦手としているタイプの、女の子だ」
「この世は地獄だな死んでくる」




そっと懐から監禁されたら抜け出せるようにと仕舞い込んでいた小型のナイフを取り出せばクラスメイト全員に押しつぶされて取り上げられた。そんな彼らに負けるものかと俺は叫ぶ




「俺っ!男に媚売りまくりの尻軽女は無理だって前話したじゃん!!そういう奴が一番ヤンデレが悪化するって俺言ったもん!!学園長の馬鹿ああああああっ!!!」




どうやら俺の快適で平穏な学園生活は終わるらしい、元から平穏には程遠かったけれど、ああクソ。やっぱりこの顔で良い事なんてない。そう感じながら俺は誰に言うでもなくただ叫んだ





ーーーー俺は平和に生活したいだけなのにっ!!!







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