短編集/男主 | ナノ


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「交わされる、絶対の契約。キュアアズーラ!」
「真実を求める、堅実な心。キュアジェット」
「自由を求める、捕らわれない心。キュアフロットぉ〜」



「「「救いには対価を!オクタヴィネル、プリキュア!」」」




 ―――プリキュアなのに対価要求するんだな。そして物は言いようだなウツボ兄弟。隠す気本当にないだろ。そして上からアズール、ジェイド、フロイド君だな??


 アズールは落ち着いたようなマーメイドドレスに身を包み、うす紫がかる白銀の髪を腰まで伸ばしタコのアクセサリーで横髪を三つ編みにして垂らしている。間違っても蹴り技とかできなさそう。あれでどうやって戦うんだろう。魔法かな。でも物理で戦わないプリキュアは果たしてプリキュアか…???


 
 ジェイドとフロイド君はオクタヴィネルの正装のような上半身に、スリットが左右対称に入るスーツスカート。そこから覗くガーターとタイツは黒一色で、網タイツである。どの路線目指したんだろうか。プリキュアって何だっけ。なんでプリキュアらしいのハーツラビュルしかいないんだ。腰まで流すターコイズブルーの髪が揺れて、通常時なら垂れる一房の黒髪がクルンと上にはねていた。雑すぎじゃないのかプリキュア。


 あの日、オンボロ寮から帰って俺も少し調べてみたのだが、誰もプリキュアの正体を推測すらしていなかった。多分プリキュア特有の認識障害でもかかっているのかもしれない。便利だな、妖精の力って。




 さて、なぜ俺が再びプリキュア()に庇われている(?)のかと言えば、その日の授業も終わり、鏡舎へと向かっている途中。あの不審者(名前をアマノジャクというらしい)に仲間になれと追い駆け回され、涙をちょちょ切らせつつ逃げていた俺の横をすごい勢いですり抜けて、殴り飛ばした彼女()達に助けられた。


 何処か殺意みなぎる目で吹っ飛ばしたアマノジャクを見下ろした彼女たち()は揃いも揃って俺の方を向き直り駆け寄ると、まるで初めて会いましたと言わんばかりに、上目遣いで「大丈夫でしたか??」と聞いてくる。自分たちの顔の良さを熟知した振る舞いだったが、中身は男である。いや…、俺も男だ。何も知らなればデレデレと顔を崩しただろう。憧れだったプリキュア。待ち続けていた待望の存在。けれどその正体を知った後だと、うれしさと悲しさで心が鬩ぎ合うのだ。むしろくそ爺(※神)に対する殺意で燃える。




「あの、大丈夫ですか?さっき言ったことは気にしないでください!」
「そうそう〜。対価ならきっちりあっちから搾り取るからぁ」
「ええ、フロット、一般生徒に迷惑をかけたわけですし、絞れるものはすべて絞りましょう」




 プリキュアはそんなこと言わないもん!!!目の前でにこやかに微笑むのは魔法()の力で伸ばした髪を高い位置で一つに括り、三つ編みで可愛らしく盛ったようなお団子を作って、貝殻のピアスを耳にはめるフロイド君が何度も骨を鳴らす。身長が俺よりも低いってすごいな。さすがプリキュア…。身長の格差社会とまで言われたオクタヴィネルの三人組が同じくらいの身長だ…。

黙っている俺に、緩いウェーブのかかった髪を揺らし、アズールが不安げに見上げる




「あの、もしかしてどこか既にケガを…?」
「−−ッ、いや、違うんだ。この学園に女の子なんて居たかなって…。監督生ちゃんだけだとばかり…」
「「「・・・」」」




 三人がピシリと固まった。意地悪な返しだっただろう。でも俺は認められないんだ…。なんでプリキュアの中身が女の子じゃなく男なんだ




「それはっーーー。」
「それは私達がこの学園の危機を感じて駆け付けたからです」




おっとぉ、オクタヴィネル三人組とは違う系統の声が聞こえてきたな。



恐る恐る後ろを振り向く。そこには初代『二人はプリキュア!』の姿にどこかに通ったものを感じる、二人組の少女()




「初めまして。自己紹介がまだでしたね。…オアシス」
「おう!!」




 辞めてくれ、俺のライフはもうゼロだ。もう、これ以上後輩の可哀相な、俺の夢をブチ壊すような現実を見せないでくれ。心の幼女先輩がだんだん萎れてきてるんだ。もう俺、プリキュアをリスペクト出来ないかもしれない。元の世界に返してほしい…。


そんな俺の嘆きをよそに二人は背中を合わせ、声高らかにプリキュアのお約束を遂行した




「熱砂の憩い、終わらぬ宴!湧き出る泉。キュアオアシス!」
「瞳に映るは希望の光!導く導。キュアウィスパー!」

「「スカラビアプリキュア!」」




吐血しそう。お腹痛い。監督生ちゃんなんで君はプリキュアじゃないんだ。見た目がきちんと女の子なだけ精神的につらい。


顔を覆ってしゃがみ込んだ。ああ、俺のプリキュア像が消えていく。死にそう。


















☆アマノジャクはフェイ君のSAN値を犠牲にし、プリキュア()の愛と勇気の前で浄化されて行きましたーーー。







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